信州大学自然誌科学館2005「自然はまわる」
◆ 5回めを迎えた今年の「信州大学自然誌科学館」は(2005年)7月29日〜31日の3日間開催されました。一昨年からは、当物理同窓会も協賛に加わっております。そもそもの発端は、永井先生と吉江先生の発案で開始された「青少年のための科学の祭典」です。入場者は毎年数千人を数え、オープンキャンパス方式による市民向けの夏のイベントとしてすっかり定着してきたようです。ことしの物理科学科からの出展は、「フーコーの振り子」(テラヘルツ分光研究室/大橋・佐々木・関根・高橋・中林・武田=敬称略、以下同=)、「ブラウン運動の観察---花粉からの微粒子及びガンボージニの運動」・「レーザーの仕組み」(素粒子論研究室/木南・美谷島)、「世界物理年2005」素粒子パチンコ・「世界物理年2005」光速の測定(高エネルギー物理学研究室/竹下・長谷川)、「磁石でおもしろ実験1・2」(磁性実験研究室)など。訪れるちびっ子や保護者たちに、イキイキと応対している学生たちとそれを見守る教官の姿がとても印象的でした。
 
 

■ はじめに ■

信州大学自然誌科学館2005「自然はまわる」実験解説集より転載

 
 2001年から始まった「信州大学自然誌科学館:自然シリーズ」は第5回目を迎えます。 

 もとよりその萌芽は2000年の「青少年のための科学の祭典」でした。子供たちへの授業負担軽減をめざした新教育課程のもと理科離れへの対処のため、「子供たちに自然科学の大切さと面白さを伝える」ために発足したものです。

 当時、永井委員長(学部長)のもと吉江実行委員長が指揮をとりました。翌年、沖野学部長の主導のもと「信州大学自然誌科学館」シリーズが理学部の概算要求とともに発足しました。理学部として手作りの「自然のおどろき(伊藤実行委員長(現学部長)・竹下幹事長)」は「自然のなぞ(二宮実行委員長・吉田幹事長)・自然のふしぎ(武田実行委員長・小林幹事長)・自然だいすき(科学の祭典と共催)(伊藤委員長・小坂実行委員長)」と受け継がれ発展してきました。参加者も1000人から3000人に増えました。

 これらの5年間の過程で大きな変化がありました。教員主導であった「信州大学自然誌科学館」が教育の一環として、学生・大学院生による出展と協力が増えたことです。参加した子供たちが学生・院生さんから丁寧な説明を聴く姿はほほえましいものでした。「学生さんの熱心で親切な説明がよかった・・」「同じイベントでも年々子供の成長とともに参加できるイベントが増す・・」「常設の科学館がほしい・・」などのアンケート結果がめだちました。
 
 また最近は「環境マインドへの学生委員会の参加」など学生さんの活躍があります。大学法人化のもと窮屈で慌ただしい教職員の日常にあって、学生さんの協力によって大学の一般開放(青少年へのサービス)やアルバイトによる社会貢献が成立しているようにも感じます。

 国家予算が巨大赤字で破産した現実があり、その延長上での国立大学の法人化(教職員の非公務員化)、教職員の身分保障リスクへの過剰な活動萎縮など悪循環が危倶されています。「学生・院生による大学再建」「外部資金より自己資金と省エネ・環境マインド」など、個人の努力で組織を支える時代なのかも知れません。

 山岳総合科学研究所の茅野所長によると「家計が苦しいときは子供も働く‥」「国が苦しいときは個人が支える‥」「大学が苦しいときは教職員が支える・・」、そんな時代かも知れません。幸いなことは日本(とくに信州)にはまだ生物多様性を維持できる森林と山岳があることです。次世代に存続させながら文明をつなぐ素地が残っているのです。

 科学的知性・純粋基礎科学の欠如のまま応用技術を駆使して走りつづけてきた日本が今苦しいことには疑いの余地がありません。まず自給自足(地産地消)を確保できる国家再建について考えることが求められましょう。信州大学理学部も同様です。

  信州大学自然誌科学館2005「自然はまわる」
  実行委員長 佐藤利幸・事務局長 神谷久夫


 


●「信大・物理学科同窓会」事務局●

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