[ 信大物理同窓会報0041号(2012-2013年冬号) ]
2012年12月28日配信



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     ┃信┃┃州┃┃大┃┃学┃┃物┃┃理┃┃同┃┃窓┃┃会┃┃報┃
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│田田田田田|     │★ SUPAA MAILMAGAZINE BULLETIN 2012-2013年冬号 │
│田田田田田|       ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
│田田田田田|──┐■━━■編集・発行/信大物理同窓会事務局■━━■
│田田田田田|田田|             (http://www.supaa.com/)
│田田田田田|田田|〒390-8621松本市旭3-1-1 信州大学理学部物理教室内
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 ■「旧文理学部物理学科」+「理学部物理科学科」OB&学生と教員の会■
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 ○--  第16回物理会総会が新年5月25日に開催する運 --○
  ○-- びです。記念講演は、名古屋大学の中村光廣氏 --○
  ○-- (理学11S)。仁科賞を受賞した丹羽先輩と一緒  --○
  ○-- に研究されてきました。講演のあと、本学の先 --○
  ○-- 生方にご参加いただきパネルディスカッション --○
  ○-- 「宇宙の起源、物質の根源(仮)」があります。 --○       ● 
 ○-- 一般にも公開するその概要が決まりました。風 --○     _(__)_ 
 ○-- 香る季節のいい松本に、是非ご参集ください。 --○   _(______)_
 ○--  武田三男(理学4S)学部長は、2期目の任期 --○  ( ________ )
 ○-- もあと1年となり、原稿を依頼したところ、こ --○  [_____◇◆___]
 ○-- れまでの研究を振り返る長文「研究を続ける」 --○    | ◆  ◇ | 
 ○-- をいただいた。急遽、連載に。その初回です。 --○  |◇/\◆|
        
      【 I ・ N ・ D ・ E ・ X 】
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◇ ┃第16回信州大学物理会総会のご案内┃・・・・・・・ 物理同窓会事務局
◇ ┃第16回総会 記念講演に中村光廣氏┃・・・・・・・ 物理同窓会事務局
◇ 青い冬のコンサート(「松本平タウン情報」より転載) ・・・ 宮地 良彦
◇ 研究を続ける =新連載 第1回= ・・・・・・・・・・・・・武田 三男
◇ 学生と卒業生の交流講座「物理学生への就職セミナー」第3回開催
  ■□ 講師別の分科会が白熱しました・・・・・・・・赤羽 徳英/藤 惇
  ■□ 就職委員になって感じたことなど ・・・・・・・・・・・加藤 千尋 
  ■□ 信州大学理学部就職セミナーを終えて ・・・・・・・・・・三澤 進
  ■□ つとめてやむな ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・鈴木 直幸
  ■□ 物理学生への就職セミナーに参加して ・・・・・・・・・川島 徳巳
◇【追想録】核エネルギーの開発に関する最近の動向について 連載第4回  
  ・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 丹羽 公雄
◇〔 リレーコラム・第4回 〕吉野幹朗さんを偲んで・・・・・・ 三井 茂喜
◇ 英国・高校体験記−教職の思い出から ・・・・・・・・・・・ 小林 善哉
◇ 私が工学部から転学した理由 ・・・・・・・・・・・・・・・ 山田 美幸
◇ [TOPICS] 日経新聞の大学の地域貢献度調査で信州大学が首位に
◇ ┃平成24年度信州大学東京同窓会総会┃・・・ 信州大学東京同窓会事務局
◇ ▼△ウィーン便り(13)△▼ ジュネーブにあるCERN(欧州原子核研究
  機構)へ出張・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・ 大塚 直彦
◇ <再録>「同窓会費」は終身会費として1万円『会計細則』決まる!
◇ 編集後記

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 ┃第┃16┃回┃信┃州┃大┃学┃物┃理┃会┃総┃会┃の┃ご┃案┃内┃
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 信州大学物理会総会は毎年1回、松本と東京で交互に開催していますが、20
13年は松本で開催し、概要が以下のようにまとまりましたのでお知らせします。
なお今回は、次のような方針で開催いたします。

 (1)学生・院生に総会幹事に加わってもらい、一緒に盛り上げる。
 (2)現役の先生全員に懇親会への招待状を差し上げる。
 (3)総会に参加できない同窓会員には、1000円のカンパをお願いする。
 (4)記念講演会は一般に公開し、松本市教育委員会や地元紙(信濃毎日新
    聞や市民タイムスなど)の後援を得る(理学部広報室と協働で)。
 (5)記念講演会の後に関連するテーマでパネルディスカッションを開催。
    パネリストとして本学の先生方に加わっていただく。

 同窓会員の皆様には、万障お繰り合わせのうえ奮ってご参加いただきますよ
う、ご案内申し上げます。
                            記

(1)開催日時: 2013年5月25日(土)14:00 〜18:15  
     ※講演会:14:00〜15:40、総会:15:50〜16:30、
     記念撮影:16:35〜16:40、懇親会16:45〜18:15
(2)会場: 信州大学理学部講義棟階段教室(予定)
(3)記念講演講師:中村光廣氏(理学11S・名古屋大学素粒子宇宙起源研究
                機構・現象解析研究センター准教授)
(4)会貴:7,000円 学生:1,000円
(5)懇親会会場:理学部A棟 多目的ホール(予定)
                                                                
 ┃記┃念┃講┃演┃に┃中┃村┃光┃廣┃氏
 ┗━┗━┗━┗━┗━┗━┗━┗━┗━┗━
  ビジュアル系の素粒子検出器である原子核乾板を用いた素粒子研究につい
 てご講演いただきます。
 ________________________________
  1)演題:顕微鏡できく素粒子のつぶやき
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  中村氏によると、信大時代は「公式の所属は素粒子論(宮地研究室)でし
 たが、それ以外に物性論(勝木研究室)、宇宙線(森研究室)のセミナーの
 一部にも出ていました」とたいへん意欲的な学生だった様子。1980年に名古
 屋大学大学院理学研究科に入学。理学博士を取得。現在の研究課題は「ニュ
 ートリノ、暗黒物質の研究、放射線検出技術の応用研究」ということです。
 ________________________________
  2)パネルディスカッション:宇宙の起源、物質の根源(仮)
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 ◎パネリスト:中村光廣氏(上記講演者)
 ◎司会&パネリスト:竹下徹 教授(信大物理科学科高エネルギー実験研究室)
 ◎パネリスト:川村嘉春 教授(信大物理科学科素粒子理論研究室)
 ◎パネリスト:長谷川庸司 准教授 (信大物理科学科高エネルギー実験研究室)
 
  = 第16回信州大学物理会総会 幹事 = 
 ■三澤進(文理16) ■藤惇(2S) ■臼杵英男(8S) ■上條弘明(9S) 
 ■小松徹夫(16S) ■志水久(91SA) ■宮本樹(02S)  

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    ■ 青い冬のコンサート ■ (「松本平タウン情報」12/11より転載)
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            宮地 良彦(信州大学名誉教授・物理同窓会名誉顧問)
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  (・>   【 宮地先生が地元紙「松本平タウン情報」一面の連載コラム『展
  /彡))   望台』に寄稿された記事を全文ご紹介します。初冬の一日、美術
 / /     館で開かれた音楽会に出掛かられた情景を綴っておられます。 】
 /"?k_     ---------------------------------------------------------

 隣人のNさんに誘われて、桂聡子さんのフルート・コンサートに出かけた。
会場は松本市里山辺の桂重英美術館。開発の進む松本市内でも、この山間の地
は昔ながらの落ち着いた田園風景を残している。

 広沢寺の参道わきに車を止め、落ち葉に囲まれたコンクリート打ち放しの建
物の横を回って美術館正面に出ると、冬の夕暮れの松本平の向こうに、北アル
プスが顔をのぞかせる。桂画伯は50歳を過ぎてから絵を描きたい一心でこの地
を選ばれたという。

 会場に集まった30人ほどはみんなこのコンサートの常連らしく、全くアット
ホームな雰囲気である。

 桂画伯の大作「前穂北尾根」を背にして始まったフルート演奏会は、聡子さ
んのトークを交えて2時間弱だったが、聡子さんの父への深い思いが込められ
ていて、それまで音文ホールやホテルなどの広い会場で聞きなれていたのとは
全く違う響きを伝えてくれた。

 また途中ティータイムの折、美術館入り口から西に目をやると、そこに広が
る青い冬の夕暮れにしっとりと包まれた松本平の灯と薄墨色の雪嶺は、息を呑
むほどの美しさであった。音楽と自然とはこれほどまでにマッチするものなの
か。

 演奏会が終わって外に出ると、桂画伯の画集で見覚えのある広沢寺の大ケヤ
キが黒々とした影を広げていた。今更のように松本の自然の美しさを味わいな
がら、乾いた冬の心を潤す豊かな調べに酔いしれたコンサートであった。

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  ■ 研究を続ける  ■   =新連載 第1回=  
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  武田 三男(理学4S/素粒子論研究室・理学部長 副学長 安曇野市在住)
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 近頃、恩師の石橋善弘先生がご退官近くになったときに、   __
「これまでそれなりに論文を発表してきたが、何か重要な  〜>・ヽ、
仕事をしたかと問われると、はなはだ心もとない」とおっ   ~⌒ヽ ) ∩
しゃられたことが思い出されます。               ( (_ ))
                              ( ~~~~)
 国内外の学会でご活躍され強誘電体相転移の現象論では
世界的評価を受けておられた第一線の研究者のおことばですので、そのときは
ご謙遜と受けとめていました。恩師と比べるのもおこがましいのですが、大学
院時代から数えると40年あまりの月日を教育と研究に費やし,100編近い論文
を発表してきましたが、自信を持って、これはという研究成果はほとんどない
ようです。定年までの残り3年余りとなった近頃は、何かしっかりした研究を
したいと強く思うようになってきました。

 理学部長を5年前から仰せつかったこともあり、なかなか教育と研究の時間
がとれず、卒業論文や修論の指導も同僚に任せてしまうことが多くなりました。
それでも、昨年は久々にファーストオーサーで論文を書きました。とは言って
も、10年ほど前に東海村の原子力研究所で実験した中性子非弾性散乱の測定結
果をまとめたものです(この年に横浜ベースターズが日本一になった)。

 共同研究者から自分の定年退職の前に早く論文にするように強く言われてい
たもので、論文を出したからと言ってあまり自慢にはなりません。リシウムヘ
プタジャーマネイト(Li2Ge7O15:略してLGO)という強誘電相転移点が室温の
283.5Kにある強誘電体です。LGOは1981年に名古屋大学工学部人工結晶研究施
設で助手をやっていたときに、その強誘電相転移を発見した私にとっては大変
思い出深い物質です。

 あれから30年も同じ物質の相転移機構を調べていたことになりますので、企
業で働いている方から見れば気の長い悠長な話です。実験手段も自前で測定で
きない場合は、他の研究機関に出かけていったり、結晶を送って実験してもら
ったりと可能なかぎりやってみました。

                  *

 研究は、まず、高周波炉による単結晶育成から始まって、誘電率測定、D-E
履歴曲線の観察、ラマン散乱、ブリルアン散乱、ハイパーラマン散乱、超音波
弾性測定、X線散漫散乱、比熱測定、メスバウアー測定、後進波管遠赤外測定、
誘電分散測定、中性子回折実験、遠赤外FTIRを実施し、そして今回の中性子非
弾性散乱を行いました。共同研究先は北大、関西学院大、東工大、ETH(オー
ストリア)、レベデフ研究所(当時のソ連)、金沢工大、京大原子炉、そして
原研といろんな方々に助けていただきました。このうち、ラマン散乱と遠赤外
FTIRは自分で組み立てた装置です。

 強誘電体の相転移機構は大別して2つに分類されます。ひとつは、秩序・無
秩序(規則・不規則)型であり、ここでは構成原子又は分子の一部が2つ以上
の等価な配置をもっているいわゆるダブルミニマムポテンシャルの極小点を行
ったり来たりしているタイプです。この行ったり来たりする緩和モードが転移
温度に近づくとソフト化して行き凍結した結果、相転移がおきます。ここでは
誘電臨界緩和が観測されます。

 一方、変位型では、原子が元の熱平衡位置から少しずれて、その結果、対称
性が変化し相転移がおきます。原子の格子振動(フォノン)がソフト化し凍結
して、新しい平衡位置が出現したためと解釈できますので、この格子振動をソ
フトフォノンと呼びます。ここでは、ソフトフォノンモードが観測されます。

 ところが、LGOでは、ラマン散乱や赤外測定でソフトフォノンモードを見つ
けて典型的な変位型強誘電体を発見したと喜んでいたのですが、その後、秩序・
無秩序型で特徴的な誘電臨界緩和が観測され、大変不可思議な相転移機構を持
った強誘電体となりました。

 そのため、上に掲げたような幾つもの実験を行い、転移機構を解明しようと
したわけです。これまでの結論としては、Ge原子とO原子で作る4面体と8面
体の骨格の格子振動のひとつがソフト化し、骨格のなかに浮かんでいるLi原子
の緩和モードにそのソフト化の性質が移譲されると考えています。これを解明
するには特殊なブリルアン散乱装置が必要で、シンガポール大学に測定を依頼
中です。
                  *

 信州大学に戻ってからは、マーチン・パプレット型の遠赤外FTIRを当時日本
分光におられた西澤誠治氏に設計・試作していただきました。この分光装置は
可視光から遠赤外(今で言うところのテラヘルツ電磁波)まで、光源、ビーム
スプリッター、検出器を適宜組み合わせて測定可能な優れものです。

 この装置を入手できたことが、私の研究の守備範囲を大きく広げてくれまし
た。1990年ごろに北海道大学の井上久遠先生から「最近、米国ではフォトニッ
ク結晶を盛んに研究している。君のところには優れた分光装置があるから、日
本で是非いっしょにやらないか」と学会や研究会でお会いする度に何度も誘わ
れました。さらには、手書きの便せん10枚にも及ぶ手紙を頂き、その大変な意
気込みに圧倒され、お手伝させていただくことになりました。

 井上先生は「今後の研究人生をフォトニック結晶に賭ける」とおっしゃって
おられました。ご定年に後4〜5年ではなかったかと思います。

 1993年に井上先生の発注した試料が浜松ホトニクスから届き、私のところで
件のFTIRにより赤外透過測定を実施しました。フォトニック結晶からは予測通
り、きれいなフォトニックバンドギャップに対応する不透明領域が観測されま
した。早速、この結果を論文とレビューを専門誌に発表しました。

 それからすぐに、千葉大学の大高一雄先生(フォトニックバンドの基本概念
を1979年に提唱した理論の大家)を巻き込んで、文部科学省の科学研究費補助
金の特定領域研究に申請し採択されました。関係する実験が、上記の論文の1
本だけで特定領域に採用された課題は後にも先にもこの1件だけと思います。

                  *

 ところで、最初に井上先生にお会いしたのは、私が博士課程の院生のときに、
指導教員のお一人の澤田昭勝先生のお供でブリルアン散乱用のファブリーペロ
ー干渉計を見せてもらいに静岡大学の研究室をお尋ねしたときです。建設用の
H鋼材をオプティカルベンチに代用した手作りのファブリーペロー干渉計の詳
細をお聞きしたあと、雑談の合間に、ふと思い立たれて実験室のロッカーから
試験管を取り出して、「これが最近興味をもっている、人工結晶だよ。」と見
せていただきました。

 手に取ってみると、試験管の中身は角度により微妙に色が変わって見えるな
んとも不思議な液体状の物質です。不思議そうに見とれていた私達に、「これ
は、ポリスチレンの微小球がそれらとほぼ同じ比重を持つ液体中に漂っていて、
ファンデス・バールス力により、引き寄せられて結晶構造をとっているため、
外から入射した光は回折され、見る角度によって色彩が変化するのだ。」との
説明を受けました。

 思えば、井上先生はあの当時からフォトニック結晶の研究の構想を温められ
ていたのだと、改めて先生の先見の明に感服している次第です。その後、科研
費の成果が出るとともにフォトニック結晶の研究は日本でも急速に進展し、最
近ではメタマテリアルの研究に発展してきています。

                  *

 この間、信州大でも高抵抗シリコンを用いたフォトニック結晶に欠陥を導入
して、光の局在機構を研究していました。幾つかの面白い結果が出始めていた
ちょうどそのころ、文科省の在外研究に調査・研究という新しいタイプの企画
が募集されました。

 対象資格が45歳以下となっており、年齢制限ぎりぎりでしたので物理教室に
わがままを許してもらい、翌年の3月から半年間、米国のランセラー工科大学、
MIT、ブルックヘブン研究所、チェコの科学アカデミー、そしてフランスのオ
ルレアンにある高温物理学研究所に遊学しました。

 研究のための幾つかの試料(立方体フォトニック結晶、六方晶チタン酸バリ
ウム等)を持参しましたが、この在外研究で一番印象に残ったのは、ニューヨ
ークのセントラルパークの樹氷の美しさとデリカテッセンのキュウリのピクル
スのサイズです。

 ニューヨークでは、雨が木の枝先に触れ、枝を包んだとたんに凍りだしてき
れいな樹氷ができていました。路上でも信号機でも同じで、とても不思議で寒
い中を、妻をほったらかしにしてじっと見入っていました。これは、雨が過冷
却状態になっているためだと気がついたのはずいぶん後のことです。

 ランセラー工科大学では、共同研究者のジョセフ・ハウス教授に厄介になり
ました。ハウス教授はフォトニックバンドの理論家ですので、ここでは実験は
できませんでしたが、今後の研究の方針を話し合い方向性を確認できました。

 ランセラー大では図書館やコンピューターセンターが夜間でも解放されてい
て、学生が一日中利用していました。また、若い軍人がミニタリールックのま
ま授業を受けていることが、日本とはかなり文化が違うと少々驚きました。構
内や町中でもリスが至る所で見られたことと、凍結防止のために塩カルでなく
砕いた岩塩を撒いてあったことも印象的でした。

 ランセラー大学を去る前日にハウス教授が隣の研究室に分光をやっている教
授がいるのでと紹介されたのがテラヘルツ時間領域分光(THz-TDS)の先駆け
であるC.Z.ザン教授でした。時間領域分光は電磁波の時間波形を直接測定する
ことから、測定した透過光や反射光の強度でなく、振幅と位相が独立して同時
に決定できる画期的な分光法です。
                  *

 もう少し勉強したかったのですが日程の都合上、翌日ボストン行きのバスに
乗りました。MIT、ロングアイランドのブルックヘブン研究所を見学して、プ
ラハのチェコ科学アカデミーに辿り着きました。この科学アカデミーで、再び
THz-TDSを開発している研究室を偶然紹介されました。早速、日本分光の西澤
氏にTHz-TDSについて電子メールを送りました。大変興味を示された西澤氏は
急遽プラハまで駆けつけてくれました。これが、西澤社長と一緒に(株)先端
赤外を信州大学発ベンチャーとして設立するきっかけとなりました。

 研究生活に復帰したいという雑文のつもりが、大変長くなってしまいました。
この後の、MIT、ブルックヘブン、チェコ科学アカデミー、高温物理学研究所
の体験談や、THz-TDSの開発と(株)先端赤外の設立、フラクタル、液体のな
い電気粘性流体のことやこれからの研究についてはまたの機会にいたしします。
乱文・乱筆(?)にご容赦下さい。
                               【 以下次号 】

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 □■  学生と卒業生の交流講座「物理学生への就職支援セミナー」   ■□
 □■  講師ごとにグループ分けした分科会は質疑が沸騰しました!   ■□
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  *    *  ※ 。      第3回「就職支援セミナー」は11月20日午後1時
*:.   .:   *.  *:  半より、理学部A棟1階多目的ホールで行われた。
 *  ※:  Д    ※     主な受講対象者は物理学専攻の学部3年生と修士1
:*   \ (∵) /    *  年生で、ことしの受講者は20数名でした。
 *   (    )   *   
             厳しい就職状況がつづくなか、一昨年に当同窓会
と物理科学科との共催で始まったこのセミナー。ことしの講師を引き受けてく
ださったOBの方々3名と演題は以下の通りです。それぞれ、若手、実業界、
教育関係者の立場から発言。司会は臼杵当会役員が担当しました。

 # 講 師:黒石 将弘 氏(04S/みずほ情報総研株式会社)
   演  題:『納得のいく就職のために』 
  # 講 師:鈴木 直幸 氏(15S/三菱自動車工業株式会社 安全技術部長)
     演  題:『つとめてやむな』 
  # 講 師:三澤 進 氏(文理16回/元安曇野市立東中学校校長)
     演  題:『教職をめざすみなさんへ』 
      
 どのような動機でその職業へ就職したか、職務の内容、職場で苦労したこと
など、一人30分の講演と、一般的な質問を受けてもらいました。講演後、受講
者は講師ごとに三つのグループに分かれて懇談。どのグループでも講師や受講
生からいろいろな話題や悩みが出され、非常に打ち解けた雰囲気で会話が進み、
そのために30分の予定が1時間に及びました。  

 終了後には6階のラウンジで懇親会を開催。ここにも新手の参加者を含め10
名ほどの院生・学生が詰めかけ、白熱した会話が交わされた。 このセミナー
には小竹先生と志水先生が終了まで出席された。同窓会事務局からは赤羽徳英
(文理10)の他、藤惇(2S)、臼杵英男(8S)、が参加。 

 講師の皆様、後輩のためにたいへんお忙しい時期に松本までお越しいただき、
貴重な講演と各種相談に応じていただき、まことにありがとうございました。

         (赤羽 徳英 藤 惇/物理同窓会事務局 学生賛助担当)

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    ■ 就職委員になって感じたことなど ■
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   加藤 千尋 (理学部物理科学科宇宙線実験研究室 准教授 就職委員)
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 4 月から就職委員になり、委員会などで話を聞いていま   。。  。
すと、理学部の学生、特に物理科学科の学生は就職活動に  。__,_,_
対する意識が他学部に対して相対的に低い、という声が聞   // ̄| \
こえてきます。                     ( ̄| ̄° ̄)
                              ̄◎ ̄~◎~
 採用活動が始まり、周りが動くのを見て”就活”に取り  ⌒⌒⌒⌒⌒⌒
掛かる学生が多いそうです。勉学に打ち込んでいる、進学
希望者が多いのでその雰囲気につられて、等々理由が考えられるようですが、
勉学に励むのは当然としても、就職を希望する学生が就職や就活について何も
考えなくて良い訳はありません。また、考えていても機を逃してしまっては意
味がありません。

 大学受験には数年かけて準備をするのですから、大学卒業後のことも1、2
年次のうちから考える機会を提供する必要があるのかもしれません。

 その物理科学科の就職状況ですが、10月末の時点で物理科学科における就職
希望者(来春卒業予定)の内定率は63%、就職・進学合わせて75%と相変わらず
厳しい雇用情勢です。今年度の就職先まとめはまだですが、過去5年間の就職
先では民間企業が大部分を占めており、今年度もこの傾向は変わらないものと
みています。

 さて、未だ就職活動をしている学生がいる一方で、12 月1 日には2014 年卒
業の学生に対する採用活動が公に始まりました。”企業の雇用意欲は緩やかに
回復している一方で採用基準は高い”そうですから、就活の技術だけでなく大
学での学修、研鑽をしっかりやらないとダメということですね。

【 物理科学科卒業生・過去5年の就職先 】
                     H19  H20  H21  H22  H23
・民間企業            87%  84%  81%  78%  85%
・(国,地方)公務員   13%   5%   0%  11%   0%
・教員                 0%   5%  13%  11%  15%
・その他               0%   5%   6%   0%   0%

 ところで、就職委員になって雇用状況や就職活動に関する資料を目にする機
会が増えたのですが、2012 年の就職活動総括に関するニュース記事に”OB・
OGを活用した個別接触の精度向上”というのがありました。これは、企業側が
学生に対する広報のあり方としてどのように社員を活用するか、という来年へ
向けての課題ですが、その理由が、”学生への意識調査で就職希望先を選ぶ際
のポイントとして「先輩社員」が2番目に多かった”のだそうです。同窓会の
存在・役割が大きくなるような気がします。

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  ■ 信州大学理学部就職セミナーを終えて ■
----------------------------------------------------------------------
     三澤 進(文理16 /物性論・勝木研究室 元安曇野市立穂高東中学校長)
----------------------------------------------------------------------
        【 講師をつとめていただいた三澤氏と鈴木氏から、今号で、
  V ?       講演を終えてのご感想をしたためていただきました。】
(∵)       -----------------------------------------------------
 \(@)⊃       
〜〜〜〜〜〜     今年度第3回目を迎える信州大学理学部の就職支援セミ
        ナーに参加し、お話をさせていただいた。新聞の報道による
と「教育やサービス業 3年で半数が退職」という大卒者離職率についての厚
生労働省の業種別や規模別の公表は、大変衝撃的であった。

「長時間労働や賃金が低いといった理由があるとみられる。」と 「2009年3
月に大学を卒業した43万人のうち、28.8%にあたる12万人が3年以内に辞めて
いた。」ということであった。よく自分の適性が分析されていたのか又は業界
の特異性と言ってよいのか企業研究などの調査・準備を周到に重ねてきたのだ
ろうか。気になるところである。

 また、最近の新聞には「来春の卒業予定者の就職内定率が63%と発表された。
2年続けての上昇であるが、有名どころにこだわらず、自分を生かせそうな中
小にも目を向けているらしい。」 そして、「12月からは企業と大学3年生の
接触が解禁され、学生の就職戦線は二本立てとなり4年生の追い込み組には
『一周遅れ』の焦りが募ろう。」とあった。

 今後は、説明会→エントリーシートの提出→内定式へと進んでゆく。とTV
のニュース解説があり、さらに自分で企業を探し(脱ネット就活)自分の相性・
適性を判断して決めていく学生も増えているとの報道もあった。

 私も学生への話の中で、大企業ばかりではなく小さな子どもを相手にする義
務教育の世界に理学部の学生さんが是非足を踏み入れてほしいとお話した。そ
の理由は、教育の現代化という課題に長野県教育が直面しながらもがき苦しん
でいる世界に思い切って飛び込んでみたらどうかと。その気で就職すれば理学
部の頭脳を十二分に発揮されて活躍できる分野と場がたくさんあるということ
を訴えたつもりです。

 しかし、なかなか現場でも話の内容を理解できる人が少ないのが現状である
ということと、時間の関係で飛躍する論理の組み立てによる展開で、十分に理
解していただいたかははなはだ疑問であり自信がもてなかった。しかし、後半
の学生との懇談会では、具体的な疑問・質問をぶっつけていただき良い討論会
になって自分でも喜んでいるところです。

 自身が教育実習等で直面した問題を率直に質問してくれたため、そのことか
ら教育者の心構えについて考えて行くことができ、問題の本質(質の高い授業
を展開し離職率の増加を防ぐこと)に迫ることができた。このように、進路を
ある程度教育分野に絞り込んでいる学生さんの個人のニーズや疑問をぶっつけ
あえることは、大変有意義であり、鋭角に議論を深めていけることから大変よ
い場になったと考えている。

 最近は、ほとんど大学生と話すような場面がなかったことから大変新鮮な感
覚を覚えた。学生の真摯な態度とやる気に好感が持てたし、このような機会は
今後、大学側でも大いに企画し学生があまり職業の選択に迷うのではなく、確
信を持って職業を選択していけるインターンシップの機会等もどんどん増やし
ていければいいのではないかと感じました。

 このような就職セミナーを企画運営してきた就職委員の先生をはじめとする
同窓会事務局のみなさんの御努力に敬意を表したいと思います。就職率100%
の東北国際教養大学のインターンシップに負けない運営を企図し、信州大学理
学部のますますの発展に今後も協力できたら幸いであります。

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  ■ つとめてやむな ■
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     鈴木 直幸(15S /素粒子研究室 三菱自動車工業株式会社安全技術部長)
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   ◎ はじめに               
   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄                   |)
 就職支援セミナーの講師の話を同窓会役員の方から頂いた時、 '―o―,
私の経験やアドバイスが学生の皆さんの参考になるだろうかと   (| \
躊躇したが、物理を愛する学生の皆さんに会え、私の期待する 
ことを伝えられること、卒業して30年近くもたつ信大に行けることなど考え受
けることにした。

   ◎ つとめてやむな
   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
「つとめてやむな」とはKS鋼を開発した本多光太郎が信条としていた言葉で
ある。本多光太郎は私と同じ愛知県岡崎市出身であり、私の家の近くの公園に
彼の資料館がある。そこでこの言葉を見つけ、いつの間にか私も信条とするよ
うになった。今回のセミナーで何を話すべきか考えたが、後述の通り、これか
ら就職し、社会に出ていく学生の皆さんへのメッセージとしては、この言葉が
ふさわしい考えた。

   ◎ 自分の就職を振り返って 
   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 就職で成功するとはどういうことであろうか。私としては、「やりがいを感
じて仕事に取り組める」、「仕事をすることで喜びを感じる」といったことだ
と思う。自分は自動車会社に就職した。自分の物理の知識や考え方で何か面白
い車や技術を開発できると考えていたが、実際、就職してみると、壁に突き当
たって悩むことや嫌になることが何度もあった。しかし、それを乗り越えるた
びに喜びを感じ、感動し、やりがいを感じられるようになっていった。

 どんな仕事に就いても、前向きに努力し続けて、はじめて、やりがいを感じ
ることができると思う。就職で成功するということは、いったん就職したら覚
悟を決め、それに打ち込み努力し続ける。そうすれば、必ずや、その仕事で喜
びを感じ、就職の成功につながる。

   ◎ 物理学科で学んだことが製造業(工学の世界)で活かせるか?
   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 答えはYESである。物理は工学の基礎であり、種々の工学にも応用が利く。
物理は物の本質を考える学問である。そのことはどんな仕事に就いても必要な
アプローチであり、物理学科で学んだことは必ず役に立つ。その分野で必要な
専門知識については、仕事を進めながら勉強すればよい。

   ◎ 学生の皆さんに期待すること
   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 私が学生の皆さんに期待することは、目標に向かって自分を磨きながら努力
し続ける人になって欲しいということである。言い換えれば自立した人になっ
て欲しい。少なくとも私はそういう人材が欲しいと思う。なぜならそういう人
はどんどん成長し、成果を上げることができであろうし、一緒に仕事ができた
ら楽しいと思う。

   ◎ 結び
   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 以上、自分の就職を「成功」とするためには、前向きに努力し続けること、
つまり「つとめてやむな」が重要と考えるのである。

 今の日本は世界との競争の中で苦しんでいる。欧米との競争だけでなく韓国、
中国、インドなど新興国とも戦っていかなくてはいけない。これに打ち勝つた
めには、皆が前向きに努力し続けていくしかない。

 これから社会へ出ていく学生の皆さんは最強の武器を持っている。それは若
さであり、時間である。学生の皆さんには「つとめてやむな」を実践する十分
な時間がある。是非、自分自身を磨き続け、成功を掴んで欲しい。これは決し
て苦しいことではなく希望に満ちた挑戦である。

   ◎ 就職支援セミナーを終えて
   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 就職に関して種々悩まれている学生の皆さん、物理好きの学生の皆さと話が
でき、有意義な時を過ごすことができました。有難うございました。私の話が
少しでも学生の皆さんのお役に立てば幸いです。

 最後になりますが、就職支援セミナーを企画頂きました物理同窓会の役員の
皆様に心よりお礼を申し上げます。この様な機会を頂き、私としても良い経験
となりました。本当に有難うございました。今後とも信大物理同窓会の皆様と
お会いし、お話しできることを楽しみにしています。

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  ■ 物理学生への就職セミナーに参加して ■
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      川島 徳巳(*12SM /光物性研究室  工学系研究科物質基礎科学専攻)
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┌────┐  【 学生・院生として受講した側から川島さんの感想です。】
│| ̄ ̄ ̄|│   -----------------------------------------------------
│|___|│  
┌────┐    11月20日、就職活動における良いスタートを切るべく「第
/田田田田//   3回物理学生への就職セミナー」に参加させていただきまし
               た。キャリアサポートセンターの企画する就職セミナーは、
全学部学科を対象としています。それに比べ、この就職セミナーは物理学生を
対象に行われたため、物理を学んでこられた方々がどのようにご活躍されてお
られるのかといった、就職に対する具体的なイメージを持てるようなお話をお
伺いすることができ、就職相談も参考になるものが多く、とても有意義なもの
でした。

 就職活動を開始すると思うことがたくさん出てきます。中でも私が就職活動
をしていて一番感じるところは、長野県の地理的な不便さです。企業研究をす
る際、ほとんどの場合は企業のホームページを見て研究していますが、やはり
そこで働いている方々のお話をお伺いしたり、疑問を質問したりして直接コミ
ュニケーションをとることでしか得られない情報もたくさんあります。
 それだけでなく、内定を勝ち取るためのテクニックとして、入りたい企業に
顔を覚えてもらうために何度も説明会に足を運んだ方が有利であるという情報
もあり、就活生たちはこぞって説明会に参加します。

 そういった流れの中で、私たちも他の就活生たちに負けないように説明会に
参加しようとしますが、多くの合同・個別の企業説明会は東京や大阪のような
大都市でおこなわれていて、長野県でおこなわれるのは一週間に1〜2回程度
しかありません。そのため、私たちは企業説明会に参加するため、何度も東京
に出向くしかありません。

 その結果、私たちは精神的にもすごく疲れ、時間的にも金銭的にも大きな浪
費をしてしまいます。具体的に、金銭面でどれくらいの浪費をするのかを先輩
方に尋ねたことがあります。すると、平均30〜40万円近くはかかるようです。
ただでさえ就職活動に対する多くの不安を抱えているのに、そのお金をどのよ
うに捻出すべきであるかということを考えるだけでも頭が痛くなります。

 こういった不安や悩みを抱えた就活生にとって、今回のようなセミナーはす
ごくありがたいものでした。また、同窓会の方がしきりにおっしゃられていた、
同窓会のネットワークを上手く活用し、就職活動をサポートする仕組みを作ろ
うとする計画に、すごく同意いたします。

 上記に示したような、一般的にやられている内定獲得へのアプローチの仕方
では、やはり地理的な不便さが大きいです。しかし、そのような仕組みの中で
信州大学物理科学科ということを生かして、就活生とOB・OGを直接つないでい
ければ、不利な状況は多少なりとも解消されるだけでなく、効率の良い就職活
動が行えるように思います。後輩たちが就職活動をする頃に、そういった仕組
みを上手く活用しているような状況を期待しております。

 そんな中、その計画の第一歩である就活セミナーに参加できたことを嬉しく
思い、開催して頂いた信州大学物理同窓会の皆様方、並びに研究指導を初めと
して就活においてもアドバイスを頂いている物理科学科の教員の皆様には、大
勢の就活生を代表してここで改めてお礼を申し上げます。これからも助言を頂
くかとは思いますが、ご協力をよろしくお願いします。

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        ┏━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┓
  【追想録】 ┃根┃源┃的┃な┃る┃探┃求┃の┃旅┃ 連載第4回
        ┗━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┛
         ■ 核エネルギーの開発に関する最近の動向について ■
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         丹羽 公雄(文理17/元名古屋大学大学院理学研究科教授)
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【 信大文理学部から名大大学院に進学。原子核乾板飛跡自動読取装置を開発
し、世界で初めてダブルハイパー核の検出に成功した後、タウニュートリノ
反応の検出にも成功する。この発見により2004年の第50回仁
科記念賞を受賞。その後ダークマターの解明にも取り組む。       ☆ ☆
2010年3月名大退職。最終講義演題は「原子核乾板と共に格闘    /☆/
して学んだこと」でした。昨年(2011年)マスコミをにぎわせた   ///☆
「超光速ニュートリノ」騒動のなかでは、共同研究者として論  ///
文発表に名を連ねることを断った一人でした。丹羽氏がこれま
でを振り返った追想文。今回は、今年の新入生には核・素粒子
がきわめて不人気だったことを踏まえ、最近の世評について。】
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      ▼▲ 戦争による原子核エネルギー開発の歴史 ▼▲

 核・素粒子の解明は無条件に価値ある仕事と信じていたから原発事故後の多
くの政党、多数の世論が原発全面否定になったことに落胆した。そして今年名
大に進学してきた学生に核・素粒子がきわめて不人気という現実は悲しい。
「核・素粒子は危険な放射能をつくり迷惑だ、研究も監視すべき」というNH
K番組「BS歴史館」には、強い憤りを持った。

 原子核の世界はマリー・キュリーが扉を開き、1932年にチャドイックが中性
子を発見して、人類は核の世界の桁違いのエネルギー、新しい力の存在を知っ
た。重力や電気力に比べ6桁も強い新しい力(核力)は湯川らによって解明
(1935年)が進み、そのエネルギーを取り出す連鎖反応の仕組みが第2次世界
大戦前夜(1937年)にドイツ人オットーハーンが発見した。

 ヒトラーの原爆開発を知ったアインシュタイン等は米国大統領ルーズベルト
に原爆開発を進言した。日本でも陸軍(理化学研究所)、海軍(京大)が「マ
ッチ1箱で米軍艦隊を吹っ飛ばす新型爆弾」の期待を背に原爆開発を進めた。

 戦争は素粒子・核の研究者を総動員させたのだ。米国は濃縮ウランを使うタ
イプとフェルミ等が開発した原子炉で得たプルトニュームを使う原爆の両方を
1945年に完成させたが、日本ではウラン濃縮にてこずっていた。米国の原爆は
ドイツをターゲットに開発されたが広島、長崎で使われ未曾有の惨事を起こし
た。

 戦後、原爆製造に関わった有力メンバーのアインシュタイン、オッペンハイ
マー、湯川や仁科等はダイナマイトを発明したノーベルのように深刻に悩んだ。
アインシュタイン等は物理学者に呼びかけてパグウオッシュ会議を組織し、原
爆反対を世界に向けてアッピールした。

      ▼▲ 化石燃料を使えばCO2が造られ原発は放射能 ▼▲

 湯川やアインシュタインの救いは原子力の平和利用、原子力発電であった。
日本の核・素粒子の研究者は放射線の管理技術を開発し、政府には原子力の平
和利用「原子力3原則」を守らせ、原爆を持たない高度経済成長国家の建設に
貢献した。日本や米国、ヨーロッパの消費電力の30%を原発が賄うまでにな
っていた。

 そして不幸にして福島の原発は深刻な事故を起こした。見えない放射能に対
する恐怖心からヒステリックな原発否定の世論が広がり、エネルギー供給の混
乱、若者の基礎物理への夢の喪失が蔓延した日本となっている。

 人類は毎日地上に降り注ぐ太陽の恵みを何億年もかけて蓄積した化石燃料を
動力に変える熱機関を発明して産業革命を起し、さらに熱機関で得た動力を電
気に換える技術を発明した。最近の自動車や飛行機、工業の発展は石油・石炭・
ガスを大量に消費し、地球環境の深刻な破壊をもたらしている。自動車や新幹
線、半導体や自動車産業、エアコンとIHを使う快適な生活、等に必要なエネ
ルギーは毎日の太陽からのエネルギー(太陽電池、風力、水力、バイオ)では
賄いきれない程多い社会である。

 化石燃料を使えばCO2が造られ原発は放射能を造る。消費文明からの後戻り
もできない。以下はこの矛盾に対する僕の私見である。

      ▼▲ 核の知識と技術は人類の未来に不可欠 ▼▲

 地球環境を壊さないで必要なエネルギーを供給する手段は原子力以外に見あ
たらない。世界は安全性の高い原発の建設に忙しいのも理性的な対応だ。世界
の原発建設はタービンの熱効率の良い大型原発に向かっているが、僕はコンパ
クトな原発(福島原発の10%以下の熱出力の空冷式)が本命ではないかと思
う。コンパクトな原発をエネルギー消費地毎に設置する未来都市(コンピュー
ターも分散処理(PC,iphone)に進化したように)を想定した夢を語ろう。

 原発の燃料のウランの重量・体積は火力発電の燃料の1万分の1程度で、火
力発電所のように港に隣接しなくてよい。火力発電の放出するCO2は量と体積が
大きく閉じ込め技術は見込みがたたない。原発の灰は燃料棒そのままのコンパ
クトさで閉じ込めが容易だ。コンパクトな原発を大量消費地の中心(都庁、県
庁、市役所)に設置すれば、送電線の建設費と送電ロスが避けられ、廃熱も暖
房に利用できる。

 熱から動力(電力)への変換効率はエントロピー増大法則で50%が限界だ。
全ての熱機関は放熱が不可欠、この廃熱を現在はクーリングタワー(原発の煙
突は冷却に使った蒸気)か、海水に捨てている。警備の観点からもコンパクト
原発はすばらしい。コンパクトで安全な原発は研究されていた。昨年3月今回
の事故前には空冷小型原発の開発の紹介記事も新聞に載っていた。しかし事故
後は原発否定の世論に押されて消えてしまったのは情け無い。実現していない
のは原理的な壁ではなく、安全性の認識不足が大きな障害だと思う。

 基礎科学は宇宙の始まり、核エネルギーで輝く太陽、地熱の源が放射能であ
る事、2重螺旋の生命の仕組み等を解き明かし、楽しい夢を与えてくれている。
そしてその知識はきわめて有用で、制御(内燃機関、原子炉、IPS細胞で臓
器、薬製造)が生む出す恩恵は最高にすばらしい。福島の教訓をバネに人類の
未来に必要な核エネルギーの開発で素粒子・核の知識と技術を武器に日本も人
類社会に貢献できることを願っている。

 世論がどうあろうと「核の知識と技術は人類の未来に不可欠だ」。

                            【 以下次号 】

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   〔 信州大学物理同窓会(メルマガ)会報リレーコラム・第4回 〕
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     ■ 吉野幹朗さんを偲んで ■ 
----------------------------------------------------------------------
                 三井(旧姓中島)茂喜(理学14S /素粒子研究室 小諸市在住)
----------------------------------------------------------------------
 _===_   
  ( ^^)    [ 悼まれる早すぎる死 ]
 o-o-))  
       吉野幹朗さん(9S)が、お亡くなりなりました。吉野さんの親戚
の方から連絡をいただき、訃報を知ったのは9月4日でした。肝硬変による病死
でした。独身だった吉野さんと連絡が取れなくなり、心配なので一度訪ねてみ
ようかと大学の先輩と相談をしていた矢先でした。
 
 1979年入学の私と1974年入学の吉野さんは本来なら接点はなかったはずです
が、サークルが同じ自然科学研究会(自然研)だったことと吉野さんが1年ほ
ど長く在籍されていたおかげで、後輩としてお付き合いを始めさせていただき
ました。私が信州大学に入った時に、かなり印象に残る先輩の一人でもありま
した。

 その後も、なんとなくウマが合い、社会人になったあとも、横浜のご自宅ま
で、飲みに行ったり小諸の私の家に来ていただいたりと、気がつくと30年を超
えるお付き合いになっていました。今年の3月にも所用で上京した際の宿とし
て利用をさせていただき、5月の物理学科同窓会の総会に一緒に出ましょうと、
誘ったのが最後の会話になってしまいました。

       [ 東京の居酒屋で偲ぶ会 ]

 吉野さんの訃報を受け、物理学科同期の方とサークルOBの有志で相談し、
10月27日に東京の居酒屋で吉野さんを偲んで集まる事にしました。急な呼び掛
けだったにもかかわらず、吉野さんの先輩・同輩から7年後に入学した後輩ま
で、また、首都圏をはじめ長野・大阪・名古屋や仙台といった遠くからも、多
くの方に集まっていただきました。中には、前日にたまたま東京に出てくる別
の用があり、それがなければ忙しくてとても参加できなかったという方もおら
れました。

 社会に出てからなかなか会えない懐かしい顔を本当に久しぶりに見て、旧交
を温めることが出来ました。長年のブランクがあっても会えばつい昨日会った
様な感覚で、話題も尽きませんでした。

 途中、学生時代そのままに思誠寮寮歌”春寂寥“を歌い、大いに語らい、気
がつくとお店の閉店時間になっていました。夕方5時から始めた偲ぶ会も6時
間があっという間に経っていました。

 私の父が他界した時、供養の際に住職の方が、こんな話をしてくださいまし
た。「亡くなられた方を、偲んで多くの方が集まる事は、故人が与えてくれた
縁(えにし)ですよ。」と。

 もう吉野さんとお話をすることは叶わないのですが、吉野さんがもう一度結
びなおしてくれた縁(えにし)に感謝をしたいと思います。

 吉野さんのご冥福をお祈りいたします。

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  ■ 英国・高校体験記ー教職の思い出から ■ 
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      小林 善哉(理学2S/電子研究室 広島市立基町高等学校勤務)
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     \│/         今では海外修学旅行と言っても珍しくもありませ
/~\  ●        んが、海外への修学旅行がまだ珍しかった1995年の
   /~~~~~\           こと、当時勤務していた学校の初めての海外修学旅
 〜〜〜〜 〜 \〜〜    行で、私は一人で30数名の生徒を引率して英国に行
 〜〜   〜        くことになりました。それは、「滞在型修学旅行」
            という形式で、あちこちの名所旧跡を巡るいわゆる
「観光型」の旅行に代わるものでした。旅程は17日間、滞在地は南イングラン
ドの小さな町、そこにある公立高校に通いました。この間、私も生徒もそれぞ
れの家庭にホームステイしながら英国での学校生活を体験しました。今回、そ
の体験記をご披露させていただきます。
 ______________________
  # 引率者が一人とは・・・!
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 私は、それ以前に、夏休みを利用して1か月間ヨーロッパ各地をおもに鉄道
で気ままな一人旅をしたことがあります。しかし、今度はそれとは違い責任の
伴う業務としての旅行でした。

 この修学旅行は学校で初めての海外外修学旅行であり、未経験のことであっ
たとはいえ、今から思えば、ずいぶん無茶な計画だったと思います。今なら、
30数名の生徒を一人で引率などという、こんな計画は立てないでしょう。英国
の学校に着いてから、受け入れの学校の先生に呆れられて、こう言われました。

「もし何か起こったら、バックアップなしでどうするのか」
「我々の場合、フランスに行く場合でもこの人数なら、最低5〜6名で引率す
る」

 でも、もう、引率1名で来てしまった以上、今さらどう言われてもどうする
ともできません。すべては後の祭り。最善を尽くすのみでした。(帰国してこ
の点を強く言いましたところ、翌年から引率は2人になりました)

 さて、ここで、私が出張報告書のようなことを書いても退屈なだけですから、
私自身が体験した生の英国体験を書いてみたいと思います。
 _____________________
  # 弁護士のお家にホームステイ
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 私は、私と同年配でロンドン大学出身の弁護士の家庭にホームステイするこ
とになりました。ここで、いわゆる「英国の中流家庭」の生活ぶりを目の当た
りにする体験をしました。

 家族は奥さんと娘2人という家族構成でした。広い敷地にはテニスコートが
あり、ダイニングルームも家族用とゲスト用の2つがありました。日本なら自
宅にテニスコートやプールがある家などめったにありません。たとえあったと
しても、そんな金持ちはテニスや水泳をしてくつろぐ時間的ゆとりがないこと
でしょう。

 これほど大きな家ではなくとも、玄関先の小さな花壇にきれいな花を咲かせ
て飾っている家が多くあり、ここにも生活のゆとりと心のゆとりを感じました。
その当時、英国人の平均所得は日本人の7割位だった思いますが、経済指標に
よらない生活の豊かさがあり、これは日本より上をいっていると思いました。
 ______________________
  # 物理の国の物理の授業を見学
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 外国に行って面白いことはいろいろな人との出会いだと思います。その中で
もいちばん興味深く楽しいのは自分と同じ仕事をしている人に会うことだと言
われています。私も英国で、「同業者」にあってみたいと思いましたので、物
理の先生(女性)にお願いして授業を見せてもらうことにしました。

 ニュートンやファラデーを生み出した国・英国の物理の授業は興味津々です。
授業内容は波動の導入部分でした。波の伝わり方を理解させるのに、生徒を一
列に並ばせ順番に立ったり座ったりさせて、媒質の各点に振動が次々に伝わっ
ていくということを体験させていました。

 また、先生の演示実験が見づらい教室後部の生徒は机に腰かけて見させてい
ました。日本では家庭でも学校でも机に腰かけるということは無作法なことで
すが、英国では日本のような授業規律より実益が重視されているのだろうと思
いました。授業の後、先生に、「これは空気の弾性を理解させるのにとても良
い教材です」と物理らしいことを言って、日本の紙風船をさし上げましたとこ
ろとても喜ばれました。

 また、先生から日本の授業との違いを尋ねられ、「日本では授業のはじめに
生徒が先生に礼をします。」と答えたところ、非常に感心して、「私も一度そ
んな授業をしてみたいです。」と目を輝かせていました。
 ______________________
  # 校内で酒を飲んでもいいの?
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 日本の学校では、校内で酒を飲むことなど絶対にありえないことです。懲戒
処分になります。しかし、英国では学年末に実験室に理科の先生が集まってミ
ーティング(日本の学校でいう教科連絡会)をもった際、なんと! ワインが
出されびっくりしました。さらに、サラダバーなどのおつまみも出て、ミニ・
パーティーという感じでした。

 そして、その日をもって定年退職する化学の女性の先生に記念品が贈られま
した。理科主任が、「あなたの家は大変汚かったので、退職したらゆっくり掃
除をしてください」と言って、ほうきやバケツ、ちりとりなどの掃除用具一式
が渡されました。贈る方も受け取る方も大笑いでした。こんなプレゼントは日
本では考えられません。また、こんな風に言われたら、日本ならひと波乱あり
そうです。これが英国人のユーモアのセンスなのでしょうか。日本なら記念品
は、置時計か旅行券といった無難な品が贈られると思います。
 ______________________
  # 校長先生の自宅で大パーティー
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 学年末行事も終わり、夏休みに入るとき、校長先生が教職員全員を自宅に招
いてパーティーを開きました。料理係は台所で料理をつくり、照明係は木の枝
にランプを取り付け、酒の係はお酒の準備といった具合にみんなで準備をしま
す。私は特に割り当てがなかったので、数学の先生たちとパブで時間をつぶし
て出かけました。私は新顔のはずなのですが、なぜか理科以外の教科の先生か
らも親しくしていただきました。

 そして、開会時間となりました。長身で体格の良い校長先生(女性)は赤い
水着姿で現れ、にこやかに歓迎のあいさつを始めました。私は度肝を抜かれて
しまいました。そして、隣に座っていた女性の先生に小さな声で、「校長先生
はいったい何歳ですか?」ときいたら、「知りません。年齢を気にするのは日
本人と韓国人の特徴ですね」と言われて、一本取られてしまいました。彼女は
以前ご主人と韓国に住んだ経験があるとのことでした。

 百人もの人を自宅に招待できる人は、日本ならまずいません。校長先生宅の
広いプールサイドにみんな集まって飲んだり食べたり、しゃべったり、踊った
りで盛り上がっていきました。しかし、楽しいはずのパーティーで、私は大ピ
ンチを迎えます。原因はダンスです。
 ______________________
  # 恐怖のダンスで身がすくむ
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 ありがた迷惑な話ですが、女性の先生が一緒に踊りましょうと誘ってくれま
した。しかし、私はダンスなどしたことがないので断りました。それでも、何
度も何度も誘われれば頑なに断るわけにもいかず、とうとう見様見真似でダン
スを始めることにしました。

 まさに、カナヅチの人が海に入っていくような心境でした。あの時のことは、
思い出すだけで赤面してしまいます。これは、おそらく私の人生で最も恥ずか
しい場面でしょう。ぎこちなく体を動かしながらふと目をやると、私の踊りを
見て大笑いをしている人がいるではありませんか。

 身が縮む思いとはこのことです。私はますます萎縮してしまいました。今は
体育の時間にダンスを教える時代ですが、そういう教育を受けていない同窓生
の皆さん、少しはダンスができるようにしておいた方が身のためですよ。ダン
スの話はもうこれくらいにしましょう。
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  # 人を信じて疑わず
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 ダンスの苦手な私に、校長先生は、「よかったらプールで泳いではどうです
か」と勧めてくれました。
「私は水着を持ってきていないので・・・」と答えたら、「うちの息子の水着
を使ってください。着替えは私たちの寝室を使ってください」と言われました。

 それで、校長先生宅のシャワールームが付いた広い寝室に入ると、テーブル
の上には無造作にむき出しでお金が置いてありました。私は、何という無用心
なことかと驚きました。同時に、何の警戒心も持たずに人を無条件に信じてか
かる、そんな精神の気高さを感じずにはいられませんでした。

 私はプールに飛び込んで英国の夏の夜を満喫しました。そして、夜遅くまで
拡声器で音楽を流し、ダンスがいつまでも続きました。しかし、お隣さんから
は苦情は来なかったようで、これにも感心しました。
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  # 生徒にはマル秘の新聞
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 翌朝、学校に出ると、早速昨夜のパーティーの様子を伝える写真入りの校内
新聞が配布されました。なんという手際の良さかと感心しました。(これは、
いかなる場合でも生徒に見せてはいけないことになっていました)見ると、私
の写真も載せられていました。昨夜いつのまにか写真を撮られていたのでしょ
う。もちろん校長先生の写真も載せられており、校長先生の写真は、水着姿で
濡れた髪をぬぐっているものでした。

 写真の説明には、「髪をかきむしっているアリソン」と茶化して書かれてい
ました。校長は職名で呼ばれることが多い日本の学校とは違い、ファーストネ
ームが使われていました。親しみを込めて校長を個人の名前で呼ぶのもなかな
か良いものだと思いますが、日本人にはなじまないでしょうね。(付記、この
新聞は記念に今でも持っています)
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  # パーティー漬け?
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 パーティーはこれだけではありませんでした。その後も理科と国語科(英語)
の合同パーティー、外国語科のパーティー等々、合計5つものパーティーに招
待していただきました。日本でもいろいろな飲み会がありますが、いちばんの
違いは、英国では配偶者を同伴して出席するということです。これは、文化の
違いによるものでしょうが、職場の飲み会に夫人同伴というのは、日本ではあ
まり見られませんね。

 こんなわけで、英国の学校や家庭の生活にじかに触れ、貴重な体験をするこ
とができました。思えばあの頃がいちばん輝いていた時期かもしれないと当時
を懐かしみながら、この一文をしたためました。

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   ■  私が工学部から転学した理由 ■
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   山田 美幸(理学09S/物理科学科4年)
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  /⌒ヽ彡    私は、信州大学工学部土木工学科から同大学理学部物理科
 <)∂ ゝ   学科に3年時に転学をしました。
⌒ヽ‐/⌒フ  
⌒(  ミ彡    高校生のときからもともと、物理科学科に入りたいという
  _」」    気持ちはありました。しかし当時は、センター試験で失敗し
        てしまい、物理科学科に入学することは諦め、物理を多少使
う所と、環境に興味があったことから、工学部への入学を決めました。

 しかし、幅広い教養を学ぶ1年生の間、様々な分野の授業を受講していくな
かで、一度、土木工学科で頑張っていこうと決めた意思が揺らぎ始めました。
多くの知識を吸収していくなかで、自分が本当に学びたいものは何なのだろう
かと考え、もう一度将来を模索したいと感じたからです。

 そのなかで、一番興味を引いた授業が物理に関するものでした。出来るだけ
多くの物理の授業を学びたかったのですが、必修で学べる物理は力学しかなく、
工学部で専門的な授業しか学べなくなる前に物理が学べるのは今しかないと思
い、選択科目で物理に関連した授業をたくさん受講しました。

 どの授業も難しく、完全に理解することはほとんど出来ませんでしたが、と
ても刺激的で、このまま物理を学び続けたい、という気持ちがこの頃から強く
なっていきました。しかし、土木に関する専門的な授業も、どんなものか楽し
みでもありました。

 3年生になり、いよいよ土木工学の専門的な授業が始まりました。興味深い
授業や研究内容もたくさんありましたが、1年生のときに学んだ物理の授業が
忘れられず、また学びたいという気持ちばかりが大きくなっていき、可能なら
ば転学したいと思うようになりました。

 転学することにより、物理が学びたいという事の他にも、学芸員の資格と教
職の理科の免許が取れることも魅力でした。

 現在、物理科学科に転学して本当に良かったと思っています。授業は難しく、
ついていくのは大変ですが、物理が好きという気持ちで、勉強や研究が辛くて
も頑張ることが出来ています。進路も決まり、現在宇宙線に関する卒業研究を
しています。解析は大変ですが、頑張っていきたいと思っています。

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   ┃T┃O┃P┃I┃C┃S┃ 
   ┗━┗━┗━┗━┗━┗━ 
   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
   ┃日┃経┃新┃聞┃の┃大┃学┃の┃地┃域┃貢┃献┃度┃調┃査┃で┃
   ┃信┃州┃大┃学┃が┃首┃位┃に┃
      
  ◎長野県勢が上位

   11月19日の日本経済新聞によれば、全国733の四年制大学を対象に、人材
  や研究成果をどれだけ地域社会に役立てているかを探る「地域貢献度」を
  調査した結果、信州大学が首位となった。

   調査は、地域貢献に関する5分野、計23の設問を設け、回答を点数化した
  もの。国立80、公立、67、私立385の計532校(72.5%)から回答を得たとか。
  総合ランキング上位校をみると、長野県の信州大学、長野大学、松本大学の
  3校が10位内に入ったほか、宇都宮大学、群馬大学、茨城大学の北関東勢も
  上位に入った。これらの大学は東京などに近く学生が流出しやすい。地域貢
  献によって大学の特色を打ち出し、同時に衰退する地域の再生につなげる狙
  いがあるようだ。

   ベスト6は、(1)信州大学、(2)宇都宮大学、(3)北九州市立大学、(4)長野
  大学、(5)岩手大学、(6)松本大学。

               (日本経済新聞・2012年11月19日朝刊 より)

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  ┃平┃成┃24┃年┃度┃信┃州┃大┃学┃東┃京┃同┃窓┃会┃総┃会┃
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 例年通り、2月の第一土曜日に東京都千代田区で、信州大学全学部合同
同窓会(呼称:信州大学東京同窓会)を開催します。山沢学長はじめ各学部長、
各学部同窓会長が出席する予定です。
 
 記念講演では、「女性の日記から学ぶ会」代表を務めていrっしゃる島利栄
子氏(1967年文理学部卒)をお招きします。「日記と歩む過去・現在・未来」
を演題にお話しいただくことになりました。詳細は下記をご覧ください。
 
 懇親会では、数名ごとにテープルに分かれて、初めての方も、学部の違う方
も、世代の違う方も、歓談出来るよう企画いたしましたので、ふるつてご参加
いただくようお願いいたします。
                       信州大学東京同窓会事務局
 
1.日時: 平成25年2月2日(土) 受付 13時〜14時
2.場所:アルカディア市ヶ谷(私学会館)千代田区九段北4-2-25 
     電話03-3261-9921
3.タイムスケジュール:
  (1)講演会 14時〜15時30分 
  「女性の日記から学ぶ会」代表 島利栄子氏(1967年文理学部卒)
  「日記と歩む過去・現在・未来」
  (2)大学からの報告 15時30分〜16時20分
  (3)総会 16時20分〜16時40分
  (4)会場移動 16時40分〜16時55分 (5)懇親会16時55分〜19時
4.会費: 10,000円 ただし、平成6年3月以降の卒業生は5,000円
5.お申し込み方法
  下記の内容を記入してFAX03-3450-5325へお送りください。
  記入内容:氏名・学部学科・卒業年度・出身県名・勤務先・住所・電話番
  号・メールアドレス
6.講演会講師のご紹介
  昭和19年長野県に生まれる。信州大学文理学部英文科卒業。長野県で教師
  をつとめ、昭和44年緒婚し千葉県市原市へ。その後、夫の転勤で北海道苫
  小牧市、山口県徳山市(現・周南市) に移り、昭和63年市原市に戻る。平
  成6牢に八千代市へ。各地で女性たちから聞き書きをして出版、講演活動
  を実施。平成8年に創立した 「女性の日記から学ぶ会」の代表として、精
  力的な活動を続ける。同会は、「明治以降の庶民の書いた日記を収集、保、
  存活用し、後世に伝えるべき日記文化を構築したい」をテーマに活動。現
  在全国に会員230名。提供された日記等4500冊。ユニークな活動が認めら
  れ平成13年にシャルレ女性奨励賞を受けた。現在自宅 「ミ二日記の館」、
  に提供された日記などを保存。各地で日記展などを開催する。
  (著書)
  「周防の女たち 証言・嫁姑のたたかい」(マツノ書店) 
  「山国からやってきた海苔商人」(郷土出版社)
  「千葉 はたらく女」(東銀座出版) など多数

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  ┃大┃塚┃直┃彦┃の┃ウ┃ィ┃ー┃ン┃便┃り ┃第┃13┃回
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  ◎ジュネーブにあるCERN(欧州原子核研究機構)へ出張
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              大塚 直彦(理学24S/国際原子力機関・IAEA勤務)
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  いま汽車でジュネーブからローザンヌに向かっていて、窓からは大きなレマ
ン湖が良く見えている。

 私たちは物理出身者だからジュネーブのCERN(欧州原子核研究機構)をご存
知の方は多いだろう。同窓生の皆さんの中にはこのニュースをウェブブラウザ
             で閲覧される方々も多いと思われるが、我々の日
    .―――――――、_   常生活に欠かせないこのウェブは、そもそもCERN
   /_]□Π□Π|__    が文献検索等のために開発したものである。最近
  D ^ ^ ^ ^|__    はヒッグス粒子に相当する粒子の存在を観測し、
 └―◎―――――◎――   サイエンス誌が今年最大の科学的発見と讃えた。

 この発見に関わった一周27kmの巨大な円形加速器LHCがCERNで最も有名な加
速器であるが、途中で反陽子に変換され反原子の測定に供されるもの、ニュー
トリノに変換されイタリアのグランサッソに旅立つもの、あるいは中性子に変
換され中性子ビームとして用いられるものなど、最初に線形加速器で加速され
た陽子は素粒子物理・原子核物理で様々な用途に用いられている。

 このうち、中性子ビームを様々な標的に照射して、反応の確率(断面積)を
測定する施設を”n_TOF”と呼ぶが、その測定グループの"Board Meeting"と呼
ばれる年1度の会議にウィーンから二泊三日で参加したのである。
                            (21DEC.2012)
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   ■ n_TOFがIAEAにデータを提供することの重要性を説く
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 このn_TOF施設は高速(20 GeV/c)の陽子を鉛標的に当てることで、熱中性子
からGeV領域まで10桁以上に渡る範囲の中性子を二次ビームとして得ることが
できる施設で、この中性子を様々な標的核に当てて広範囲の入射エネルギー範
囲の反応断面積を一気に測るという、世界的にも極めてユニークな実験施設で
ある。

 標的とする核はマグネシウムのような軽核からキュリウムのようなウランよ
りも重核まで様々で、恒星内元素進化や核廃棄物転換に関わる中性子捕獲・分
裂反応がグループの主な関心である。

 素粒子実験のように氏名・所属で1ページ以上占める大人数が関わる論文は
原子核実験では珍しいが、このn_TOFグループが出版する論文は例外で、例え
ば今年3月にでたキュリウム245の論文(http://dx.doi.org/10.1103/PhysRevC.
85.034616)を見ると、ヨーロッパを中心に40近い研究所の著者が名前を並べて
いる。

 IAEAにて各国で測定された実験核データを収集・編集し加盟国に提供する立
場にあるものとしては、このn_TOFグループの論文にて出版されたデータをデ
ータベースに登録し、IAEAの加盟国の研究者がいつでもどこでもそのデータを
取り寄せられるようにしておかねばならない。

 ご多分に洩れずn_TOFでも学位を取った後に他の分野に移ったり就職する大
学院生が多いのだが、そういう人たちが取得したものを含め、取得データが核
物理や核工学で活用されるよう、n_TOFの人たちがIAEAを通じて広く世界にデ
ータを提供することの重要性を説くことが今回の出席の目的であった。

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   ■ 片道11時間、列車に揺られる「冬の旅」に
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 IAEAもそんなに旅費が潤沢ではないという事情から、今回厚かましいと思い
つつ旅費・滞在費の工面をn_TOFグループのスポークスマンに書面で依頼した。

 するとある日突然オフィスに聞き慣れない声の電話がかかってきて、セール
スマンかと思ったら、これがそのスポークスマンからの電話である。お金は出
せるけれども飛行機代までは出せない、という。

 会議まで1ヶ月以上あったから早割等の安い航空券があるだろうと思ってネ
ットを調べてみたが、ウィーン・ジュネーブ間に限ってなぜかその種の安い航
空券が全く見あたらない。

 しかし、考えてみればスイスはオーストリアの隣国であって汽車で日中移動
できる範囲のはず。連邦鉄道のウェブページを調べてみたら、往復で100 EUR
しない切符が見つかった。それで片道11時間もかかるけれども迷わずにその切
符を買ってしまった。

 オーストリアやスイスを横断する鉄道旅行、というと風光明媚な旅を想像さ
れるかも知れないが、夏であればともかく冬はひたすらどんよりとした曇り空
の中をゆく「冬の旅」であって、青空と草原のコントラストを楽しんだり青空
を背景に雪を頂いた岩山を眺めながら、とはいかない。

 また、初対面の人が多い会議にお金をもらってこちらからデータ提供のお願
い事をしに行く、という事情もあり、行きの車中で過ごした時間のほぼ全ては
会議のスライドの仕上げに忙殺され、長旅を感じる余裕もなかった。

 それでもオーストリアの西端近く、アールベルク峠と呼ばれる辺りで列車が
トンネルをくぐるごと、雪に覆われたところ、覆われていないところが現れる
ような景色の変化や、日が落ちた峠をローザンヌへ下る辺り、夜景の分布から
そこにレマン湖があることに気づいたり、と、飛行機での移動では感じること
ができない景色の移り変わりを楽しむことができた。

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   ■ CERNの加速器群の中央制御室を見学する
  ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 私が出席したのは3日間の会議の最終日だけでそれも午前中で終わりだった
が、n_TOFグループのスポークスマンのご好意で加速器群の中央制御室を見学
することができた。

 雪をかぶったジュラ山脈に向かって車で進んでいくといつの間にかフランス
領に入る。

 中央制御室では沢山の線形・円形の加速器がどう連結されどこに供給されて
いるか図面で説明を受け、1.2秒ごとに陽子の供給先がTOF、LHC、グランサッ
ソなどと切り替えられている様子を、極めて強力な中国製の緑色レーザポイン
タでモニターを指しながら紹介して下さった。

 美谷島先生の研究対象でもある高エネルギー重イオン反応分野ではCERNのSP
Sという加速器が有名で、そのSPSに鉛イオンを投入する円形加速器では鉛イオ
ンと陽子が同時に加速できると聞いてたまげた。

 日本では夏に電力供給が足りなくなって加速器の運転に支障を来すことがあ
るが、冬に電力需要が多い当地では加速器に冬休みをもうける条件で電気代が
設定されていると聞いた。

 その電力はスイスからの供給も可能ではあるが基本的にはフランスから供給
されているそうである。

 TOFとは距離の分かった二点間の中性子の移動時間(Time-Of-Flight)から中
性子のエネルギーを決定する方法で、n_TOFグループはそのための185mのトン
ネルをその終端の検出器群とともに維持しているが、あいにく実験中というこ
とでその施設を見学することは叶わなかった。

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   ■「チーズフォンドゥ」は唯一のまともな外食
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 さて、ジュネーブはウィーンと同様国連都市としても知られる。

 その国連関係の一機関であるWHO(世界保健機関)の邦人職員がチーズフォン
ドゥを食べさせるレストランに案内してくれた。日本でチーズフォンドゥとい
うと肉やら色んなものを突き刺しては鍋に突っ込むが、ジュネーブで夕食を共
にした人たちの話ではフランスパンだけを鍋に突っ込むのが本来の楽しみ方で、
山盛りに出されたフランスパンをちぎってはチーズに突っ込んでスイスワイン
とともにひたすら食べ続けた。

 フランスに接している割にチーズ以外には旨い食事は余りないようで、その
意味でチーズとフランスパンというのは物価の高い当地に滞在中で唯一の外食
として正解であったかも知れない。

 さて、ジュネーブを出て2時間半ほど、列車はベルンを過ぎ、次が終点チュ
ーリッヒである。チューリッヒでの乗継時間は10分ほどしかないが今のところ
遅延もなく無事に乗り継げそうである。

 それから更にウィーンまで8時間、アールベルク峠の辺りで日が落ちて景色
も楽しめなくなるが、延着がなければ日付が変わる前にウィーンの我が家に辿
りつける予定である。

 ●『OB/OG』第6回→( http://www.supaa.com/kikou/otsuka01.html )

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 <再掲>■「同窓会費」は終身会費として1万円。『会計細則』決まる!■
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 1.同窓会費は終身会費として1万円とする。一括払いを原則とするが、本
 人からの申し出があった場合は事務局長が分割払いを認めることができる。

 2.事務局長名で金融機関に同窓会の口座を設ける。事務局長が通帳・印鑑
 を 管理する。会計担当がカードを管理して口座からの出し入れなどを行う。
 
 3.在校生からの同窓会費徴収は、事務局が徴収日を決めて実施する。徴収
 後、在校生の会費支払い者リストは、すみやかに会長ほか、会計担当および
 関連事務局員に伝達する。

 4.金融機関への振込み手数料は会員の負担とする。

 5.会計担当は、年1回開催する総会を利用したり、メールで呼びかけたり
 して、 卒業生からの会費徴収に勤める。

 6.毎年開催の同窓会総会における参加費の徴集など会計管理については、
 その年の幹事が担当し、事務局が補佐する。必要経費は事務局から事前に仮
 払いのかたちで支出できる。幹事は開催後しかるべく早く収支を事務局に報
 告し清算する。 

 7.会計年度を4月から翌年3月とする。           ┳ξ
 会計はすみやかに決算報告を作成                  ●●●
 して会計監査担当から監査を受ける。               ●●
                                                  ●
 8.本細則の改正は総会で行う。
            ┏━┳━┳━┳━┓
 ▼下記いずれかの口座に┃同┃窓┃会┃費┃のお振込みをお願いします!
            ┗━┻━┻━┻━┛
 ------------------------------------------------------------------
  ◆郵便局の場合/通常郵便貯金 
  記号:11150 番号:20343411
  口座名義:信大物理同窓会 代表者 武田三男(たけだみつお)
  住所:390-8621 松本市旭3-1-1

  ◆銀行の場合/八十二銀行 信州大学前支店
  店番号:421 普通預金 口座番号:650215
  口座名義:信大物理同窓会 代表者 武田三男(たけだみつお)
  住所:390-8621 松本市旭3-1-1
           
 ̄/ ̄/ ̄/ ̄/ ̄/ ̄/ ̄/ ̄/ ̄ ◎編集後記◎/ ̄/ ̄/ ̄/ ̄/ ̄/ ̄/ ̄/ ̄/ ̄/ ̄

       ●・・12月14日に、宮地先生を囲んで忘年会が開かれました。
  /\ ☆  集まったのはいつものメンバーでしたが、少人数なるが故に
 │○│    話題に集中でき、たいへん中身のある会合となりました。それ
 │ │     にしても宮地先生はお元気で、また記憶力も抜群のご様子。新
/| |\   年も益々ご活躍いただきますようお祈り申し上げます。
 ̄ ̄ ̄ ̄    ●・・第16回物理会総会の記念講演のあと、パネルディスカッ
 ||||     ションを企画しました。本学には、中村氏の研究に近い素粒子
       に関する実験と理論の研究室があります。パネリストとして竹
下先生、川村先生、長谷川先生に依頼しましたところ、快諾いただきました。
たいへん有難いことです。最先端の物理のお話が聞けそうで、いまからワクワ
クしてきます。教育機構の1年生から院生まで多くの学生に聴講いただき、教
員&学生と同窓会との絆がいっそう深まればいいな〜と、考えています。
●・・ことしの「就職セミナー」は昨年の反省から、小竹先生から提案のあっ
た、講師ごとの分科会(グループ分け)が大成功。個別の相談に白熱した質疑
が交わされました。就職委員の加藤先生が風邪でダウンされて出席いただけな
かったですが、周到な準備をしていただいたことに感謝します。3人の講師の
皆様、ありがとうございました。現在、学生の就職活動にもっとOB/OGを活か
すべく、名簿の整理を検討中です。同窓会員の皆様、ご協力をお願いします。
●・・先の総選挙は、40%の得票で80%の議席を得るという、小選挙区制度な
らではのトリッキーな結果。国民の多数が望まない偏った方向に走り出さない
か?? これまでの3.5年の政権が、ナチスドイツの露払いとなったワイマー
ル体制にならないか? 国政をねじ曲げた小沢裁判が大正デモクラシーを死に
追いやった「平成版の大逆事件」にならないか? 前号の勝木先生のご心配が
頭をよぎります。四分五裂の中から大きな健全野党の誕生を望みたい。(MT)
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○・・福島原発の事故処理のその後の進捗はどうなっているのでしょうか。廃
炉への工程は安全に進んでいるのでしょうか。使用済み核燃料は安全に処理さ
れているのでしょうか。更に最終処理保管場所はどうするか。この事故を起こ
してしまった日本がこれに取り組まなければならない使命があります。研究者・
技術者を増員、育成するべきところが、大学の原子力、核、素粒子関係部門の
志望学生が減っていると聞いております。困った事です。
○・・当誌に連載して頂いている丹羽氏(文理17)の今号の投稿は、核エネル
ギーの開発の歴史と、化石燃料との比較が科学的に論じられております。世論
がどうあろうと「核の知識と技術は人類の未来に不可欠だ」と主張する科学者
の前向きな姿勢に感服しました。我々物理学を専攻した者は風評に惑わされる
事が無いようにしたいものです。
○・・一週間前の衆議院の総選挙の結果、自民党が圧勝しました。先の民主党
のあまりにもの非力さに民意が離れた結果であって積極的勝利と云えないまで
も安定多数を占めたのであるから、是非やって貰いたい事がある。「社会的に
訓練を受けない若者を増やすな」です。学卒者が就職出来ず、なんらかの組織
に属してまともな仕事をしない期間を過ごすとまともな大人(社会人)になる
機会を失うからであります。人間が劣化して、国力が衰退します。国家100年
の計を見据えた政治をしていただきたい!              (MM)
===================================
■ MAILMAGAZINE BULLETIN『信大物理同窓会報』0041号(2012-13年冬号) ■
□ 2012年12月28日  編集・発行/信大物理同窓会事務局
《編集委員》松原正樹(文理10) 藤惇(2S) 渡辺規夫(4S) 太平博久(6S)
□編集長:藤 惇 □ 発行人:根建 恭典
■当会報のWEBでの閲覧サイト: (http://www.supaa.com/kaiho/0036.html)

       ┌──┐  (http://www.supaa.com/)
       │\/│ (info@supaa.com/) (makoto@insatell.co.jp)  
       └──┘     
      ___________________________________________________
      (C)信州大学物理同窓会事務局 無断複製・転載を禁ず
       ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄



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