[ 信大物理同窓会報0044号(2013年夏号) ]
2013年7月17日配信



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          ┃信┃┃州┃┃大┃┃学┃┃物┃┃理┃┃同┃┃窓┃┃会┃┃報┃
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│田田田田田|          │★ SUPAA MAILMAGAZINE BULLETIN 2013年夏号 │
│田田田田田|            ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
│田田田田田|──┐■━━■編集・発行/信大物理同窓会事務局■━━■
│田田田田田|田田|             (http://www.supaa.com/)
│田田田田田|田田|〒390-8621松本市旭3-1-1 信州大学理学部物理教室内
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 ■「旧文理学部物理学科」+「理学部物理科学科」OB&学生と教員の会■
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 ○-- 昨夏、「ヒッグスらしき新粒子発見」という激 --○   ,〜,ξ
  ○-- 震が走りましたが、その後も余震は続いていま  --○  ( 人 ),〜,
  ○-- す。ちょうど、OPERA計画を遂行している名古屋 --○   '〜'( ◇ )
  ○-- 大学の中村教授が当同窓生。氏による今総会で  --○  <⌒⌒>'〜'ζ
  ○-- の記念講演と討論会を企画開催できました。素  --○   ( /( ◇ )ξ
  ○-- 粒子物理が新たな地平を開いたこの時機を得て、--○  ξ  '〜'
 ○-- 会場からは活発な質問が続出するなど大いなる  --○
 ○-- 盛り上がり。その興奮をフォローするべく特集  --○
 ○-- 「宇宙の始まりと物質の起源」を組みました。 --○

      【 I ・ N ・ D ・ E ・ X 】
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
◇ { 特集 } │宇│宙│の│始│ま│り│と│物│質│の│起│源│
  @ 素粒子物理の今ー2013年  ・・・・・・・・・・・・・ 竹下 徹 
  A プランク長さの世界から標準模型の世界へ ・・・・・・・川村 嘉春 
  B ヒッグス粒子の発見について ・・・・・・・・・・・・長谷川 庸司
  C 大規模物理実験の苦労を想像してワクワク ・・・・・・・南雲 秀雄 
  D 母校で講演をさせていただいて ・・・・・・・・・・・・中村 光廣
◇ 16回信州大学物理会総会の報告 ・・・・・・・・・・・・・・小松 徹夫 
◇ 16回信大物理会総会 審議事項/収支決算報告・・・・・事務局各担当者
◇ 第16回総会における「活動履歴の報告2012-13」から(抜粋)
   =問題点と今後発展の課題= ・・・・・・・・・・・・・・・藤 惇
◇ 物理学科長の樋口先生に10の質問 ・・・・・・・・ご回答:樋口 雅彦
◇ 電光影裏(「松本平タウン情報」より転載)・・・・・・・・ 宮地 良彦
◇ 研究を続ける =連載 第3回= ・・・・・・・・・・・・・ 武田 三男
◇ [イベントご案内] ◎信州自然誌科学館 2013「自然のちから」
◇ [TOPICS] ・信大学長┃山沢清人氏を再任
          ・理学部同窓会総会は11月2日に決定
          ・信大 電子メール4100通喪失
◇ <再録>「同窓会費」は終身会費として1万円『会計細則』決まる!
◇ 編集後記

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┌─┐┌─┐
│特││集││宇│宙│の│始│ま│り│と│物│質│の│起│源│
└─┘└─┘└─└─└─└─└─└─└─└─└─└─└─└─
     【 ことし5月に開催された第16回物理会総会の記念講演(中村光
     廣氏/11S・名古屋大学教授)に続き「宇宙の始まりと物質の起源」
     と題して本学の先生方3名にも加わっていただき、パネル討論を行
     っていただきました。一般の聴衆を含め、およそ80名が聞き入った
     ほど、関心の高いテーマです。パネリストの先生方には、捕捉ある
     いは追加の解説などを寄せていただきました。また中村氏と同期の
     南雲秀雄さんからは、今回の講演会に参加された感想を。最後に中
     村氏から届いた講演後の心境についてのお便りを掲載しました。】
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《特集》@   ■ 素粒子物理の今ー2013年 ■ 
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   竹下 徹 (信州大学理学部物理科学科 高エネルギー物理学研究室教授)
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         素粒子物理学は今、革命期にあります。40年間探し求めて
  / ̄ ̄/    きたヒッグス粒子が見つかり、素粒子標準理論の正しさが真
 / ◆ /~~~/   に証明され完成しました。いよいよ標準理論を超える次の理
 /    /◇ /    論は何なのか? パラダイムの変革が始まりました。
 ~~~/~   /     
  ~~~~~     長年標準理論という枠内で暮らしてきた私を含む研究者は、
        今実験が標準理論を超える理論の方向を決める瞬間を期待さ
れてドキドキしています。
               
 何しろ私がこの世界に入って以来、標準理論は全ての実験結果を説明できる
確固たる地位を保っており、揺らいだのは、ニュートリノの小さな質量の発見
の時だけでした。まるで偉い先生の前で対抗のしようが無かったのですが、そ
の先生の肩の位置まで上って来れた感があります。いよいよこの肩から先を見
通す時なのです。

 素粒子実験は加速器を使って宇宙初期の高温状態を人工的に作り出し自然が
どうなっているのか探っています。多くの素粒子理論の研究者達により、いろ
いろな可能性が指摘されていますが、我々の宇宙で自然が実際どの道を取って
今に至ったかは、実験で知る事ができます。自然を理解するとき、美しい理論
の方を人は基本にしたがりますが、現実はどうでしょうか?

 質量がない事は理論のなかできれいで計算できる枠組みを提供してくれます
が、現実には質量があり、なくてはいけません。ヒッグス機構を導入して質量
を作り出す機能を持たせた標準理論は、私に取っては、少々とってつけた感が
あります。しかしCERNの大型陽子衝突型加速器(LHC)のアトラス実験などで見
つかったヒッグス粒子の質量は、素粒子標準理論の枠内で許される最低値付近
にあります。

 またヒッグス粒子の崩壊モード等の測定結果は、標準理論的ヒッグス粒子描
像がかなり近いことを示しています。これはとても興味深く、標準理論を超え
る理論の糸口はとても小さい、つまり実験で発見するのはなかなか難しい事か
もしれません。

 ヒッグス粒子は、スピン0の素粒子で自己結合をします。すなわちヒッグス
粒子が自分自身と相互作用するという変わりものです。自己結合定数の測定が
標準理論を超える理論への糸口を与えると感じています。私は、LHCの実験で
あるアトラス実験を20年前から立ち上げてきましたが、この実験はあと20年は
稼働し続け、ヒッグス粒子の謎を解明し、標準理論を超える理論の糸口を探し
ます。

 しかし自己結合の測定は大変困難で20年後までうまく運転ができても10事例
程度しか期待できません。このためヒッグス粒子の自己結合を測定する別の事
を考える必要があると思っています。そのために次世代の電子陽電子衝突実験
計画ILCにも積極的に参加しています。

 電子陽電子衝突型加速器実験は、精密測定を得意としていますので、現在の
ような微妙な差異を明らかにする事が重要な実験では大きな力を発揮します。
ILC計画は世界中の研究者達が企画したものですが、日本国内に誘致する事が
濃厚になってきました。この1、2年で日本国政府の判断がなされると思い期
待して活動しています。

 宇宙は超高温高エネルギーのビッグバンで初まり、断熱膨張により冷え続け
ています。宇宙が初まった初期にある種の対称性が破れ、ヒッグス粒子と質量
が発生しました。真空も有限の期待値を持ち異なる安定点に相転移しました。
これらの宇宙論のシナリオは素粒子標準理論を取り入れて、確固たるものなり
つつ有ります。さらに宇宙の初期に近づくには、素粒子標準理論を超える理論
が必要です。

 宇宙の初まりを知ることと物質の根源を知る研究が一体化して進んでいます。

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《特集》A    ■ プランク長さの世界から標準模型の世界へ ■ 
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     川村 嘉春 (信州大学理学部物理科学科 素粒子理論研究室教授)
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         中村光廣氏の記念講演会を拝聴し、いろいろ勉強になりま
  V ?      した。また、パネル討論会に参加し、大いに刺激を受けまし
(∵)      た。この場をお借りして、信州大学物理同窓会事務局の方々
 \(@)⊃      並びに関係者にお礼を申し上げたいと思います。
〜〜〜〜〜〜    
         それでは、最近取り組んでいること・漠然と考えているこ
とを紹介したいと思いますが、いきなり本題に入りますと、消化不良を起こし
かねませんので、研究テーマとキーワードに関する長めの説明から入ります。

 研究テーマは「素粒子の標準模型を超える物理の探求」です。ちなみに、標
準模型とは強い力、電磁気力、弱い力をゲージ相互作用として、それらにまつ
わる素粒子の現象を(総合的に)記述する場の量子論に基づく模型で、実験で
確認されている素粒子物理学の最前線です。

 研究のキーワードは「力の大統一」、「超対称性」、「余剰次元」および
「超弦理論」です。その内容を箇条書きにします。

 ・ 力の大統一:重力を除く3つの力(強い力、電磁気力、弱い力)
   の統一。これを実現する理論は「大統一理論」とよばれます。
 ・ 超対称性:フェルミ粒子とボース粒子の入れ替えに関する対称性。(ご存
    知のように、ある種のフェルミ粒子は物質を構成する役割を果たし、ある
    種のボース粒子は力を媒介する役割を果たしています。)
    超対称性を有する理論は「超対称性理論」とよばれます。
 ・ 余剰次元:我々が認識している3次元空間以外の余分な空間次元。
 ・ 超弦理論:究極の構成要素は点粒子ではなくて、1次元的な広がりを持つ
    物体(弦あるいは紐)であるとして、さらに超対称性を含む、究極の理論
    の最有力候補。
 
 これらの概念は極めて興味深いものですが、残念ながら、現時点で いずれ
も実験で確認されていません(決定的な証拠を持ち合わせていません)。さら
に、「自然がこのような概念を必ず用いているに違いない」という実験事実に
基づく必然性も持ち合わせていません。

 しかしながら、非常に多くの研究者がこれらの概念(のいずれか、複数の場
合が多い)に基づいて標準模型を超える物理を探求しています。

 それは、これらの概念が標準模型の謎を解明してくれると信じているからで
す。主な謎を箇条書きにします。

 ・ 謎1.なぜ、重力、強い力、電磁気力、弱い力が存在するのか?
 ・ 謎2.なぜ、(3世代の)クォークとレプトンが存在するのか?
 ・ 謎3.ヒッグス機構の起源は何か? ヒッグス粒子の質量は量子補正の下
     で安定に保たれるのか? (自然さの問題)
 ・ 謎4.量子論のレベルで重力をどのように扱えばよいのか? 
 
 謎1と2については、大統一理論が部分的に鮮やかに回答してくれます。例
えば、「統一された1つの力が強い力、電磁気力、弱い力に分岐する。各世代
のクォークとレプトンは統一された1つの力の下で同等に振る舞うような1つ
の多重項に属する。」というふうにです。

 ただし、力の大統一が実現されると、「陽子崩壊の問題」が発生します。
「大統一理論は陽子崩壊を予言するにも拘らず、それが観測されないのは
なぜか?」という問題です。

 謎3については、「超対称性」あるいは「余剰次元」により解決されると期
待しています。しかし、これらの概念が予言する一群の新粒子は(残念なが
ら)ヒッグス粒子を発見したLHC(CERNの大型ハドロンコライダー)をもって
しても未だに発見されておりません(グレードアップした後に、発見されるこ
とを期待しています)。

 謎4については、超弦理論が有望ですが、超弦理論を実験で検証するのは至
難の技です。なぜなら、超弦理論が記述する物理はプランク長さ(おおよそ10
の-35乗メートル)の世界だからです。
というわけで、(一応)準備が終わりました。
 
 本題の最近取り組んでいること・漠然と考えていることを説明したいと思い
ます。

 まず、出発点は、「超弦理論」あるいはその拡張としての究極の理論の存在
を想定することです。そうすると、「超弦理論」は「力の大統一」、「超対称
性」、「余剰次元」を内包した理論になっているので、これらの概念に対して
(実験事実ではなくて、理論的にではありますが)必然性が生まれます。

 つまり、「超弦理論」が真実を捉えているならば。「力の大統一」、「超対
称性」、「余剰次元」はプランク長さという極微の世界で実現しているはずで
す。ただし、これらの概念に対する直接的な証拠が(グレードアップした実験
においても)見つからないならば、究極の理論の効果により、プランク長さの
付近で、大統一された力の分岐および超対称性の破れが起こり、余剰次元の大
きさもプランク長さに固定されているという説が有力になると思います。
 
 実際、陽子の寿命は力の分岐が起こる長さのスケールの4乗に逆比例するの
で、分岐がプランク長さの辺りであれば、陽子崩壊がまだ観測されていないと
いう実験事実と矛盾しません。また、「超対称性」や「余剰次元」が予言する
新粒子たちは十分重いと予想され、LHCをもってしても生成することができま
せん。この場合、謎3が再訪すると思われますが、究極の理論が解答を与えて
くれると信じて、その機構の解明に励んでいます。

 さらに、(プランク長さの世界で実現していると予想される)「力の大統一」、
「超対称性」、「余剰次元」に関する痕跡(間接的な証拠)が、LHCやILC(国
際リニアーコライダー)を用いて将来探索可能なエネルギー領域に残っている
と期待しています。下記の参考文献では、その一例を提案しています。

 いつか、もっとよい報告ができれば幸いです。

 -------------------------------
 参考文献:Yoshiharu Kawamura, "Terascale 
 remnants of unification and supersymmetry 
 at the Planck scale", 
 to appear in Prog. Theor. Exp. Phys., 
 arXiv:1304.7885[hep-ph].

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《特集》B    ■ ヒッグス粒子の発見について ■ 
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 長谷川 庸司(信州大学理学部物理科学科 高エネルギー物理学研究室准教授)
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       ☆ ☆   先日、名古屋大学の中村先生をお迎えして、物理同窓会
     /☆/   主催のパネル討論「宇宙の始まりと物質の起源」が行われ
   ///☆     ました。私もパネリストの一人として参加いたしました。
  ///         参加された皆さんからの質疑応答の形式で進行し、質問が
                  たくさん出され、時間が足りなくなるほどの盛会であった
                  と思います。その後、会報の担当の方から寄稿依頼があり、
パネル討論での話を少し補足して、最近の話題となったヒッグス粒子発見にま
つわる話を書いてみたいと思います。

 ヒッグス粒子は素粒子に質量を与える素粒子で、素粒子物理学の標準模型に
登場する素粒子のうちで唯一未発見だったスピン0の粒子です。新粒子のスピ
ンが0であれば、その粒子がヒッグス粒子であることの確かな証拠の一つにな
ります。また、ヒッグス粒子が他の素粒子と結合する強さは、その素粒子の質
量に比例すると予想されるので、結合を測定することでヒッグス粒子かどうか
確認できます。

 ヒッグス粒子探索は40年以上前から行われ、いつの時代も世界最高エネルギ
ーの粒子加速器を用いて行われてきました。発見できなかったのは、ヒッグス
粒子を生成するのに必要なエネルギーが足りなかったためです。

 特定の粒子(2つの光子や4つの荷電レプトンなど)が観測される事象の生成
率を粒子系の不変質量の関数として表したとき、ある質量のところで生成率の
山型の増加が見つかれば、それが新粒子によるものであり、その質量が新粒子
の質量になります。

 2008年9月、ジュネーブにある欧州合同原子核研究機関(CERN)に建設された
世界最大の粒子加速器である大型ハドロン衝突型加速器(LHC)が稼働を始めま
した。LHCは陽子と陽子を加速し正面衝突させ、宇宙の始まりから10の-11乗〜
10の-10乗秒後の状態を再現します。衝突現象は、ATLASとCMSと名付けられた
測定装置で測定されます。

 信州大学の高ネルギー物理学実験研究室はATLAS実験に参加し、μ粒子を検
出する検出器の建設などに携わりました。μ粒子の検出は今回のヒッグス粒子
の発見にも重要な役割を果たしました。LHCは稼働開始直後に大きな事故に見
舞われ、1年をかけた修理の後、2009年11月に再稼働し、その後は順調にデー
タ収集が行われました。

 ヒッグス粒子の探索では、CERNでのATLASとCMSの各コラボレーションによる
合同セミナーが最も早い公式発表の場となりました。まず、2011年12月に、兆
候らしきものが見え始めたとの報告がありました。この時は、統計的ゆらぎの
可能性もあるので、次回の発表をお楽しみに、という感じで締めくくられまし
た。

 そして、2012年7月にその時が訪れました。「ヒッグス粒子らしき新粒子」
の発見が発表されたのです。各コラボレーションのスポークスパーソンは統計
精度の5σの数値を強調しましたが、「発見」という言葉は用いず、CERN所長
が発見を力強く宣言したのが印象的でした。2012年12月のセミナーでは、より
統計精度が上がり、また、解析に多くのデータが必要なスピンとパリティの測
定も始まりました。これまでに蓄積した全てのデータを用いた解析結果のまと
めが2013年4月に発表されました。新粒子の発見は確実なものとなり、ヒッグ
ス粒子の特徴であるスピン0とパリティ+を強く示唆する結果が得られました。
また各素粒子との結合の測定は、精度はまだ低いですが、標準模型と矛盾がな
い結果が得られています。これらを踏まえ、CERNは今後「らしき」を外し、晴
れてヒッグス粒子と呼ぶことにしました。

                  *

 さて、このヒッグス粒子の発見と私達の生活との関わりはどのようなもので
しょうか。巨額の予算を使って行われた新発見を、何かに役立てることができ
るのでしょうか。よく問われますが、問われた研究者は電子の発見になぞらえ
ます。約120年前に発見された電子は、当時は何の役に立つかはわかりません
でしたが、その後の科学や技術の発展には欠かすことできなかったことはご存
知のことと思います。

 ヒッグス粒子もそのような道を辿らないとは限りません。何年後になるか、
はたまた、永遠にそのようなことにはならないかはわかりません。ただしスピ
ンオフとしては、ヒッグス粒子を発見するのに用いられた最先端の加速器技術
は、すでに広い分野で利用され、私達の生活に不可欠なものとなっています。

 今回、ヒッグス粒子が発見されました。この発見は標準模型に最後の一ピー
スをはめ込みました。しかし、標準模型は様々な疑問を内包しているので、今
後はそれらに答える標準模型を超えた物理の探索が課題となります。ヒッグス
粒子の発見は、素粒子物理学における一つの区切りであると同時に、新たな扉
を開くことになります。

 最後に、私自身の感想になりますが、ATLAS実験に16年携わってきてた2年
前の12月に、ヒッグス粒子の兆候が見えた時の高揚感と安堵と、そして一抹の
寂しさがありました。LHC加速器とATLAS実験は、新しい物理現象の発見を目指
し、今後も改良が継続的に行われるので、この実験に引き続き携わって行きた
いと思います。

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《特集》C    ■ 大規模物理実験の苦労を想像してワクワク ■ 
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    南雲 秀雄 (理学11S/統計研究室・新潟青陵大学教授 新潟市在住)
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  、∩∩    信州大学物理同窓会から送られてきた「中村光廣氏 記念講
  ⊂田田⊃  演会」のチラシの写真を見て、彼は信州大学卒業当時の写真を
  ⊂田田⊃  使ったのではないかと思うほどでした。髪は黒々で分量もあの
  /∪∪   当時のまま、顔の輪郭も変わっていない。これは松本に行って、
       あの写真が今のものなのか確かめなくてはならないと、ネット
       で参加を申し込みました。そして当日、講演会の会場に入ると、
32年ぶりに会ったのに髪の毛は黒々で若々しい中村君がいました。

 彼の話は、コンニャクの中に内視鏡を差し込んで行くような動画による原子
核乾板の紹介で始まりました。黒く細い無数の線が、一部は急激に焦点を失い、
新たな無数の線が焦点を獲得していくようなこの映像を見せながら、中村君は、
この映像を見てどこで新しい粒子が発生しているか見つけることができた人が
いたら、アルバイトで雇いますと言うので、彼の研究チームの中での立場が理
解でき、できれば大規模物理実験の苦労話が聞きたいと思っていました。

 イタリアで行われたOPERA実験は、中村君の話に出てきた実験の最大のもの
だったと思います。スクリーンには、スイスとフランス国境付近の航空写真が
映し出され、そこにはその地下に埋まっている円形の超大型加速器の位置を示
す図が描き込まれていました。その円の上部が鉄道の引き込み線のように分岐
して途切れており、その先からニュートリノが発射されるのだとのことでした。

 このニュートリノを730Km先のイタリアのグランサッソーの地下で、先に出
てきた原子核乾板を使って捕らえるという、私にとって気の遠くなるようなプ
ロジェクトです。

 興味深かったのは、この実験に使われた大量の原子核乾板を準備するその方
法でした。グランサッソーのOPERA検出器の写真は、その前に立っている人と
比較すると、大きな2階建ての倉庫といった感じです。この中を原子核乾板で
埋め尽くすのですから、とんでもない量の乾板が必要であることが想像されま
す(残念ながら中村君が言った数値は記憶していません)。

 これは大掛かりな機械で仕上げたのかと思えば、そうではなく、人手を使っ
て(文字通り人の手を使って)原子核乾板の準備をしたとのこと。スクリーン
に映った映像では、大勢の人が、B4サイズほどの乾板を並べたり、ひっくり返
したり、まったくの手作業でした。なぜ人手でなければならなかったのか、中
村君が説明したことを、残念ながら記憶していませんが、恐らくこの部分で中
村君が大変苦労をしたのではないかと想像します。

 最先端の大規模物理実験の中で、思案の果てに、大勢の人を集めて手作業を
してもらおうと、中村君のチームが決めたときのことを想像すると、不謹慎で
はありますが、ワクワクするものがあります。中村君も、この苦労が強く心に
残っていたために、この講演で紹介してくれたのではないかと思っています。

 暗黒物質を何とか捕まえようという話の中でも、暗黒物質が地球に対して風
を起こすのか、それとも地球とともに動くために地球上では風を感じることが
できないのかという予想よりも、従来のものより粒子の細かな乾板を開発しな
ければならなくなった時の、「人」に関する苦労話に興味を惹かれました。

 フィルムメーカーに開発を依頼したけれど、デジタル化が進んでいる今、そ
のようなフィルムの開発を行うことはできないと断られた後の中村君のチーム
がどのように対処したかの「物語」はとても面白かったです。

 中村君とは、名古屋大学の院生の部屋で初めてのスペースシャトル打ち上げ
をテレビで見たとき以来でしたが、あのときも今回も大変お世話になりました。

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《特集》D    ■ 母校で講演をさせていただいて ■ 
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 中村 光廣(理学11S/素粒子研究室・名古屋大学エコトピア科学研究所 教授)
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   ヽ│/    ⌒ヽ    昔の建物もすっかり改装され新しい建物も増
  ─ ◎ ─    (  )   えて賑やかになったキャンパスに久しぶりにお
   /│\  (   )     邪魔しました。多くの信大OBに取ってそうで
    ⌒ヽ  ノ     )_    あると思いますが、私にとっても松本は、第二
   (  ー´          )   のふるさとと言うべき所となっています。お世
                     話になった下宿のおばさんもまだご健在(齢95
歳です)で、家族キャンプの行き帰りなどに数年に一回ぐらいは下宿を訪ねて
いますが、いつもあわただしい訪問で、大学の方へはほとんどお邪魔したこと
がなく、今回講演を聴きに来てくれた同期の人達のあまり変わらない風体とも
混じり合って、なにやら別世界に降り立った心地でした。
     
 何年か前には、学生時代に常念を見るためによく訪ねた浅間温泉の裏山(御
射山)に行くべく、記憶にある道をたどってみましたが、目印だった建物がみ
つからず、人に尋ねてたどり着いた場所はすっかり木々が覆い繁り、常念は見
えず、三十数年の年月の流れを自覚させられました。

 この懐かしい場所には木村素衛(きむらもともり)という人の石碑が昔から
建っており、その表には、

「真実に実在を愛する人にとっては 自己の死は何でもない 大きな交響曲の
一音が私の一生であろう 発すべき時に発すべき音を発した時 そして消えた
時 それで一切はいい 秋雨よ静かに降り続け」

 とあります。

 私は木村素衛と言う人はこんな文章を書いているので音楽家だろうとぼんや
りと思っていましたが、西田幾多郎影響下の教育学者であり、戦後の信州教育
の復興に心を砕き、信州で客死した人であることを名古屋に来てから知りまし
た。学生時代はもっと「自己中」でしたので、この「大きな交響曲の一音が私
の一生であろう」というのがなんとも張り合いのない話だなと思っていました
が、研究室や研究分野を先人達から引き継いだこの歳になって、この大きな交
響曲の一音を担うということの意味あるいは重みが少しはわかったような気が
しています。

 懇親会の後、松本駅の展望デッキからながめた常念は、37年前に受験で初め
てきた時と何ら変わり無く、壁のごとく西天を区切る北アルプスに夕日が沈ん
でゆくのをながめ、帰途につきました。

 列車に揺られ、夢うつつで今日の出来事に思いを巡らせているうちに、わが
娑婆:名古屋に到着。以来今日まで「いつもの日々」を送っています。

 同期、同窓の皆様の各方面での活躍をお祈りします。またお会いしましょう。

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    ■ 第16回信州大学物理会総会の報告 ■       小松 徹夫 (理16S)
----------------------------------------------------------------------
  ∩ ∩       ◆  2013年5月25日(土曜日)、信州大学理学部(松本
☆(*^−^)☆     キャンパス)に於いて第16回総会が開催されました。
┏━○━○━━━┓  14:00開会、記念講演第一部は、中村光廣先生(名古
┃第┃16┃回┃物┃  屋大学教授、理学11S)に「顕微鏡できく素粒子のつ
┣━ ━\/━ ━┫  ぶやき」と題して講演をしていただきました。第二部
┃理┃会┃総┃会┃   は、中村先生と信州大学理学部物理科学科の3人の先生
┗━┻━┻━┻━┛   方により「宇宙のはじまりと物質の起源」をテーマに
            パネルディスカッションが行われました。
                 
 講演会、パネルディスカッションは、長野県教育委員会、松本市教育委員会、
信濃毎日新聞、中日新聞社、市民タイムス、松本平タウン情報、テレビ松本ケ
ーブルビジョンの後援を得て一般にも開放し、同窓生のほか松本市内の高校生
を含む一般聴講者も多く来場し聴講されました。

《 記念講演会・パネルディスカッション 》

 中村先生の研究室では、素粒子を観察できる写真フィルム(原子核乾板)の
技術を用いて、宇宙の成り立ちに関わるニュートリノを含む素粒子の研究を行
っています。素粒子研究の世界では高エネルギー加速器を用いた粒子の衝突実
験が注目を集めていますが、古くからある原子核乾板という方法も粒子の軌跡
を捕捉する手段として着実な成果を挙げています。最近のテーマとして、暗黒
物質(ダークマター)候補である未知の粒子の探索や、これらの技術を応用し
た宇宙線による巨大構造物の透視(ミューンラジオグラフィ)の研究の現状に
ついてお話しいただきました。構造物の透視技術は、火山の密度解析--火山の
レントゲン写真のようなもの--や製鉄所の溶鉱炉の寿命診断などに応用が期待
されているとのことです。

 第二部は、中村光廣先生と信州大学理学部物理科学科の3人の先生方により
「宇宙の始まりと物質の起源」をテーマにパネルディスカッションが行われま
した。信州大学理学部の竹下先生(高エネルギー実験研究室教授)をコーディ
ネーターに、中村先生、川村先生(素粒子理論研究室教授)、長谷川先生(高
エネルギー実験研究室准教授)に参加いただきました。聴講者からの質問に答
えながら、先端素粒子研究がどこまでたどり着いているのか、実験、理論それ
ぞれの立場から、最新のトピックや今後の展望について分かりやすく説明して
いただきました。

 ・この10年で我々は宇宙に随分近づいた
  (137億年前と言われる宇宙の創成時の状態について理解が深まった)。
 ・ダークマターは重力としか相互作用しないのか、あるいは弱い相互作用も
  するのか。
 ・標準模型の先にあるものは、超対称性、余剰次元、ひも理論か。
 ・ひも理論では、無限に近い解が出てしまう。
 ・超対称性粒子は、1TeV〜2TeV(テラエレクトロンボルト) のレンジで
  は見つかりそうな兆しがない。
 ・CERNのLHCは今年、来年とシャットダウンしアップグレードされ、エネル
  ギーレベルが現在の8TeVから13TeVになる。
	 
 中村先生、竹下先生ともに大学進学前は物理志望ではなく天文学志望だった
そうで、「セカンドチャレンジは必ずしもネガティブではない」とのこと。

《 総会 議事内容 》

1)  来賓あいさつ
 根建会長(文理9回)の同窓会の発展を祈念する挨拶にはじまり、安曇野市
 からお越しいただいた名誉顧問の永井先生(元理学部長)、理学部長の武田
 先生(理学4S)、物理科学科 学科長の樋口先生にご挨拶いただきました。
 武田先生からは、理学部の学生中には目標が明確でない学生もいるので、同
 窓会として就職に臨む心がまえについても指導いただきたいとの言葉があり
 ました。
2) 議長、書記選出  
 議長に小西(理学2S)さん、書記に三澤さん(文理16回)を推薦、拍手で承
 認されました。
3) 年次活動報告 
  藤事務局長(理学2S)より、第3回就職支援セミナーの開催、毎月のSKYP
 Eによる役員会開催、年4回の同窓会メルマガ会報の送付など1年間の活動
 が報告されました。第3回就職支援セミナーでは、講演の後講師毎のグルー
 プに分かれ相談に応える場も設けられ、好評を得た旨報告がありました。学
 年幹事・研究室幹事については、1学年と2研究室の幹事が決まり、38学年
 と5研究室の幹事の顔ぶれが揃いました。WEB(メーリングリスト)新規登
 録者は13名、宛先不明での削除者が9名。前年は新規12名、退会者は1名。前
 々年は新規11名が登録。学生からの登録はまだ少ない状況。今後の同窓会発
 展のための活動指針として、次のことが強調されました。
  ・学年・研究室幹事にもっと活躍していただくこと。そのための仕組みを
   早期に確立しなければならない。
  ・就職については、学生・教員・卒業生の共通課題として取組み、物理学
   生のための就職支援セミナーを継続して推進して行く。
4) 決算報告、監査報告 
 志水会計担当(理学91SA)より決算結果が報告されました。続いて、松原会
 計監査(文理10回)より決算に問題ないことの監査報告があり承認されまし
 た。
5) 予算案 
 志水会計担当より予算案の説明があり拍手で承認されました。

 なお、今年の総会には、現役の院生2名の方が総会幹事として参加。準備作
 業や当日の受付を担当していただきました。同窓会員の出席者は33名でした。

《 懇親会 》

 竹下先生のご発声で乾杯。世代を越えて歓談の輪が出来、親交を深めること
 ができました。司会の赤羽さん(文理10回)、松原さん(文理10回)に促さ
 れ、多くの方に近況等を交え、ショートスピーチをしていただきました。
 最後は、清水さん(文理11回)の音頭で「春寂寥」を斉唱し、松原副会長の
 閉会の辞により締めくくられました。

 【続き・全文→ http://www.supaa.com/soukai130525/index.html 】
___________________________________
【収支決算報告2012年度】(2012年4月〜2013年3月)
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
  [省略]
----------------------------------------------------------------------
▲2012年度決算報告を上記の通り報告致します。             2013年5月7日
                         会計/近藤一郎 志水久
▲以上 監査の結果正確である事を確認致しました。
                         監査/松原正樹 赤羽徳英

======================================================================
    ■ 第16回総会における「活動履歴の報告2012-13」(抜粋) ■  
----------------------------------------------------------------------
   =問題点と今後発展の課題= 
             報告者・藤 惇 (理学2S/物理同窓会事務局長)
----------------------------------------------------------------------
  T〔 学年・研究室幹事にもっと活動していただくことが鍵〕
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 この1年間で、学年幹事1学年、研究室幹事が2研究室と幹事が決まって進
展が見られた。これで、38学年と5研究室の顔ぶれがそろった。当会の更なる
る発展と活性化は、こうした学年・研究室幹事の皆様の動きにかかっていると
いえる。組織の要なので、彼らによって多くの卒業生が動き出させば、同窓会
は“一部の人の集まり”から脱することができるだろう。

 前提として、学年・研究室幹事の皆様に当同窓会の理念が共有され、自らの
役割を十分理解し、役員会との意思の疎通がはかれている必要がある。しかし
現状は、その兆候すらない。そこで、当会役員会では以下のような案が検討さ
れていて、今総会で了承を得て実施していきたい。

(1) 学年(研究室)名簿はこれまで同じ学年(研究室)内でも(メールなど
  による)回覧が躊躇されていたが、その運用を各学年(研究室)幹事の裁
  量にまかせ、自発的に活動していただけるようにする。名簿に変更があっ
  た場合には、すみやかに名簿担当役員に報告していただく。逆に、WEB
    などから直接変更情報などが入った場合には、学年(研究室)幹事に通報
    する。
(2)(1)のように学年・研究室幹事の皆様にもっと権限を持っていただくた
    めに、その権限と責任に関するマニュアル(規則)を急ぎ作成する。役員
  会内でも、担当を強化してそれに備える。
(3) 役員と学年・研究室幹事で構成する「学年・研究室幹事部会」を設置、
  総代・副総代を置き、同一のメーリングリストに参加するなどして、お互
  いの意思の疎通をはかる。
(4) 樹木の根を役員会に例えれば、学年・研究室幹事の皆様は幹であり枝で
  ある。学年・研究室幹事のなかからも、新たな方を役員に迎えるなどして
    樹木全体を強くして成長をはかることが望ましい。
(4) まずは、学年・研究室幹事の皆様に、当該学年ならびに当該研究室にW
  EB登録(244名)されている会員をお知らせして、未登録の会員に登録
  のお誘いをしていただく「WEB登録者500人倍増計画」を提唱させてい
  ただく。知り合いや友人のひとりでも多くの仲間を増やしていくことによ
  って、郵送費などの軽減が図れることはもちろん、“会の輪”が広がる。

 また、これからの伝達応答ツールとしてFACE BOOKの活用も検討したい。

  U〔 同窓会だからこそできる「就職支援セミナー」を継続推進 〕
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
“就職”という学生・教員・卒業生の共通課題(キーワード)に取組むことで、
同窓会には大きな存在価値が生まれると思われる。昨年の「就職支援セミナー」
では、講演後に講師毎にグループに分かれ、個別相談にも応えるようにした。
参加学生には好評だったようだ。学科などからも継続の要請があり、今後も取
り組んでいきたい。

 今後は、一歩進んで卒業生との「就活面談」の仲介が課題となってくる。学
生の就職希望企業に勤める先輩が、学生からの連絡に応えて情報を伝えるとい
った仕組みである。就職委員の先生からも要望もある。「就活面談」には同窓
会名簿の職業欄の充実が不可欠。また、理学部全体で取組むことが効果的だ。

 そこで、理学部同窓会役員会で当会の「就職支援セミナー」の経験を踏まえ
て、当会からの役員を通じて再三再四提案した結果、理学部同窓会もようやく
名簿のデジタル管理に動き出した。しかしその動きは遅々たるもの。当面、
「物理学生のための就職支援セミナー」講師選定にも当会名簿・職業欄の充実
は必須。会員の皆様には、今回総会案内にその旨を伝えて協力をお願いした。  
 
======================================================================  
   ■  信州大学理学部物理科学科長の天児先生に10の質問 ■
----------------------------------------------------------------------
   ご回答:樋口 雅彦(理学部物理科学科 学科長/物性理論研究室教授)
----------------------------------------------------------------------     
 V ?       【 毎年、物理科学科の新学科長に10項目の質問。ことしは、
(∵)       樋口先生にうかがいました。「演習授業必修化」を取り入れ
 \(@)⊃      た新しいカリキュラムが実施されるなど、意欲的な改革のな
〜〜〜〜〜〜  か、教員数の減少と高齢化に対して、先生方は苦闘されてい
        る模様です。以下のようなお答えをいただきました。】
           -------------------------------------------------------

1)現在の学生気質・特徴を3つほど挙げるとすると・・・
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 3つは難しいので日ごろ感じていることを・・・。
 学習面に関してですが淡白な学生が多いような気がします。切り替えが早い
と言う長所もあるのですが、もう少しこだわって欲しいと思うようなことに対
して、諦めが早い、突っ込みが足らないなどを感じます。

2)現役学生に望むこと、おこごとや注文などについて
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 上のことと関連しますが、習ったことや勉強したことに対して、もう少し丁
寧な理解を心がけて欲しいと思います。具体的には、自分をごまかさず に勉
強すると言うことでしょうか。

3)学生の勉学意欲や質を高める方策を講じておられるのでしょうか?
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 個人的には、勉強の先にどんな研究のフロンティアがあるかを話すよう心が
けています。物理学科としては、以下の項目 6)で述べるような方策を 講じ
ています。
  
4)信大物理科学科に求められていることとは、どのようなものでしょう?
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 物理を絡めて考えると難しいですが、とにかく、社会の第一線で活躍できる
人材を育て上げることだと思います。

5)現在の物理科学科のかかえる最大の問題点は何だとお感じですか?
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 教室会議でもしばしば議論されるのですが、入学早々に遅れを取る学生が増
えてきています。
 
6)上記問題点・課題に対する解決策としてはどんなことが考えられますか?
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 新しい授業カリキュラムを導入しました。この新しいカリキュラムをさらに
効果的に運用するために、教室会議などで相当時間割いて、情報交換や 問題点
抽出などを行っています。

7)信大物理科学科は教育重視・研究重視、どちらだとお考えですか?
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 研究重視で進めばおのずと教育の質も向上すると思っています。
 
8)数年前に国立大学は独立行政法人化されましたが、その後の変化について
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 大きな変化はないと思います。
 
9)ことしの入試について、応募倍率や受験率などどのようにお考えですか?
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 ことし大きく変わる要因はないと思いますが、今までどおり、信大物理を目
指す受験生が増えるよう心がけていきます。
  
10)当同窓会に期待していることや、要望がありましたら教えてください
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 これまでも就職セミナーや成績優秀者表彰などで多大なご支援をいただいて
おります。ありがとうございます。今後もよろしくお願いします。

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    ■ 電光影裏 ■    (「松本平タウン情報」2013年5/14より転載)
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      宮地 良彦(信州大学名誉教授・物理同窓会名誉顧問 松本市在住) 
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  (・>   【 宮地先生が地元紙「松本平タウン情報」一面の連載コラム『展
  /彡))   望台』に寄稿された記事のひとつを全文ご紹介します。旧制高等
 / /     学校記念館の改装で目に付いたことについて……。教養深くして、
 /"?k_     知的探究心の衰えをしらない先生の筆致に触れてください。 】
     ---------------------------------------------------------
       あがたの森の旧制高等学校記念館リニューアルオープンで、目
についた写真があった。剣道場で「型」を演じている二人の剣士の背後の掛け
軸が「電光影裏に春風を斬る」と読めたからである。

 夏目漱石の「吾輩は猫である」の中に、哲学者八木独仙と金縁眼鏡の美学者
迷亭が碁を打つ場面がある。「ついでくりゃるな八幡鐘を」「一剣天によって
寒し、えい面倒だ、斬ってしまえ」などという応酬に交じって、この「電光影
裏」が出てくる。

 これは鎌倉幕府の執権北条時宗の知遇を得て、はじめ建長寺の住職、のちに
円覚寺の開祖となった中国の僧侶無学禅師の言葉で、原文は「珍重す大元三尺
の剣、電光影裏に春風を斬る」である。「元の兵士の剣はもっと大切に使いな
さい、私など春風のようにたあいもなく切れるものだ」ということらしい。

 元の兵士に襲われて斬られそうになったとき、無学のこの言葉に兵士は太刀
を捨てたともいわれるが、実際の状況とは思われない。確かなのは沢庵和尚が
柳生但馬守宗姫の問いに答え、剣道に寄せて禅の妙締を説いた仏書「不動智神
妙録」にこの句が出ているということである

 漱石が「猫」の中で多用したダジャレのひとつだと思っていた「電光影裏」
が、禅の極意だとは驚いた。「猫」のこの部分が書かれたのは明治39年、松高
創立は大正9年。私の通った旧制八高の剣道場にこんな言葉は見られなかった。

 どういういきさつでこの軸が松高の剣道場を飾ることになったのか、知りた
いものである。

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  ■ 研究を続ける  ■   =第3回=  
----------------------------------------------------------------------
  武田 三男(理学4S/素粒子論研究室・理学部長 副学長 安曇野市在住)
----------------------------------------------------------------------
┏━━━━━━━━━……−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
┃ チェコ科学アカデミー物理学研究所への短期留学
┗━━━━━━━━━……−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 大学の運営・管理の仕事から解放されたら、研究生活    ┏━━┓
に復帰したいというつもりで雑文を書き始めましたが、  ┏━┃田田┣━┓
17年も前の在外研究での思い出話になってしまいました。 ┃田┃田田┃田┃
暫く間お付き合い下さい。今回はプラハ滞在記です。   ┃田┃田田┃田┃ 
                           ┃田┃田∩┃田┃
                  ※

 プラハ郊外のチェコ国際空港には1996年4月12日に予定通りJFKから無事到着
しました。プラハは、ご存知の通りチェコの首都で、市街は今年も大洪水に見
舞われたブルダヴァ川を挟んで西側のフラチャニーの丘にそびえるプラハ城と
カレル橋を渡った東側の旧市街、新市街のバツラーフ広場で構成されています。
当時、プラハの人口は100万人(チェコ全体で1000万人)くらいです。

 名古屋大学工学部で院生をしていたとき、指導教官の高木豊先生の招きで2
ヶ月ほど滞在されたチェコ科学アカデミー物理学研究所のドヴォルザーク先生
(今回小生がお世話になったときは所長をされていた)のご縁で、石橋先生の
ご紹介により強誘電体部門のペッツェルト博士にお世話になりました。

 科学アカデミーの宿舎はアカデミーの敷地に隣接したゲストハウスであるホ
テルマザンカです。ここは短期滞在者用のホテルと長期滞在者用の自炊が原則
の寮が混在したような不思議な宿泊施設です。滞在費は極めて安く、当時のレ
ートで月1万円程度と記憶しています。

 ともあれ、これから3ヶ月間はホテルマザンカとアカデミーを往復する生活
となります。

 ランセラー工科大学ではハウスとフォトニックバンドの計算結果の議論ばか
りで実験ができませんでした。そのせいもあって、到着したその日にペッツェ
ルト博士に実験の相談をしました。強誘電体部門には試料の温度を変えられる
クライオスタットの付いた赤外フーリエ分光器があるというので、持参した強
誘電体やフォトニック結晶の試料の遠赤外透過スペクトルをすぐにも測定した
かったのです。
                  ※

 実験や共同研究の直接のホスト役は若手のカンバ博士が仰せつかったようで、
実験以外にもなにかと面倒を見てくれました。研究室は学位をとったばかりの
ヒリンカ博士と一緒で机と椅子は勿論、インターネットに接続された専用のパ
ソコンも用意してくれました。お陰で、インターネットを使って井上久遠先生
やハウスとやり取りし、フォトニック結晶の論文を仕上げて投稿することがで
きました。

 プラハには全く知り合いがいませんでしたのでインターネットはたいへん心
強く思いました。ただし、当時は日本語入力のパソコンを持参できませんでし
たので、日本の共同研究者とも英語でのやり取りで、なかなか微妙な言い回し
には苦労しました。

 物理学研究所強誘電体部門にはブルッカーの遠赤外まで測定可能な赤外フー
リエ分光器があったのもここを選んだ理由のひとつでした。早速、装置を見せ
ていただきました。サンプルホルダーや偏光装置に独自の工夫があり参考にな
りました。液体ヘリウムの供給設備もありましたが、かなり古い装置や道具を
使用していました。

 チェコは東欧では名だたる先進工業国でしたが、長い冷戦の間に西欧、米国、
日本とはかなり差が付いてしまったことは歴然としていました。科学アカデミ
ーの実験装置は古く最先端とはいきませんが、良く手入れがされており大切に
使われていました。また、研究者は超一流の優れた若手が集まっていました。

 チェコでは、プラハ・カレル大学[Charles University in Prague:カレル
は英語のチャールズのチェコ語読みです。前出の世界文化遺産のカレル橋は英
語ではチャールズ橋]が一番有名でヨーロッパでも最も歴史のある大学の一つ
です。

 出身者には、磁場のニコラ・テスラ、変身のフランツ・カフカ、フス戦争の
ヤン・フスがいます。また、教鞭をとった中には、アインシュタインやマッハ
もいます。チェコの場合、アカデミア(学者や研究者)を志す若者の多くが大
学に残るか科学アカデミーにやってきます。したがって、物理学研究所にもチ
ェコ全土から優秀な科学者の卵が集まっていました。

                  ※

 カンバやヒリンカもそうした若者で、専門の物理は勿論のこと、語学も達者
で、英語は勿論のこと、ロシア語、ドイツ語、フランス語を自由に操れるよう
です。チェコは東欧の他の諸国と同じで、大戦前はオーストリア、ロシア、ド
イツに大戦後はソビエトの実質支配下にありましたので、ロシア語とドイツ語
はどこでも通じるようです。(チェコ語はロシア語と同じスラブ語の仲間です
が、英語とほぼ同じアルファベットを使用しているため市中の看板や店の表示
を理解するのには助かりました。)

 物理学研究所では若手に限らず、その当時では既にソビエトではなくドイツ
やフランスへの海外研修(留学)が盛んでした。特に、強誘電体分野では構造
相転移のソフトモードの測定に中性子非弾性散乱が極めて有効なため、フラン
スのグルノーブル原子力研究所に定期的に出張している様子でした。

 実験の日程を組んでもらいましたが、当時のチェコの経済状態は芳しくなく、
たぶんその影響で液体ヘリウムを使用しての実験は1ヶ月後となりました。そ
れまでは、2次元フォトニック結晶の論文の仕上げとフォトニック結晶におけ
る群速度異常によるラマン散乱の増強効果の実証実験の構想を練ることにしま
した。

 休日はホテルにいてもやることがないので土曜日も研究所に出かけていまし
たが、他の所員はまったく出勤して来ません。この点は、日本の研究所や大学
とはかなり習慣が違います。働く国民(労働者)のほとんどが国家公務員であ
ることから、休日は完璧に休むようです。

 研究所に行っても、会うのはいつも玄関の脇の小部屋にいる守衛のおじさん
だけです。時々、呼び止められてお茶とケーキをおごってもらいました。片言
の英語でいろいろ話しているうちに趣味は切手の収集とのことが分かりました
ので、手元にあった郵便物に張ってあった切手をプレゼントしました。日本や
米国の切手は珍しく、喜んでもらえたようです。プラハや郊外の観光スポット
も紹介してもらいました。きっと、日本人は休日まで仕事をしにくる変わった
人種だと思ったことと推察されます。

 液体ヘリウムの汲み出しができるようになり、強誘電体の測定も無事終了し
たのが6月下旬でした。この頃になると、研究所の話題はバカンス一色となり
ます。話を聞いていると皆さん数家族が共同で郊外に小さな別荘を所有してい
るらしく、夏休みには家族揃ってそこで過ごすのを楽しみにしているようです。
所員は6月の半ばからぽつりぽつりといなくなって、7月にはもう誰も見かけ
なくなってしまいました。

 この間、カンバとペッツェルトそして御大のドヴォルザーク所長がご自宅に
招いてくれましたのでチェコの家庭の様子が少し分かりました。どこの家庭も
奥様がかなり偉く主導権は奥方にあるようでした。ドヴォルザーク家では奥様
が愛煙家でやたらに煙をまき散らすので閉口したのを覚えています(所長は喫
煙されない)。
                  ※

 日曜日や国民の休日にはホテルマザンカから路面電車(トラム:1回の乗車
で100円程度)に載って旧市街やプラハ城に何度も出かけました。アカデミー
はプラハ市の北東部に位置する丘の上にあり、トラムの最寄り駅はラドユヴィ
ー(Ladvi)です。ここからは乗換えなしでカレル橋の西のプラハ城のふもと
の停車場(Malostranskenamesti)に行けますので大変便利です。そこからは、
古い町並みを縫う様に坂を上ってフラチャニーの丘にそびえるプラハ城に行く
も良いでしょう。

 カレル橋を彫像(左右の欄干には何体もの彫像が立っている。プラハで一番
印象深い場所でした。)を見ながら渡って旧市街に抜けるのも見応えがあって
感動すること請合いです。旧市街にはヤン・フスの像のある広場があり、ここ
には旧市庁舎のかの有名な天文時計を見に大勢の観光客が訪れます。正午にな
るとこのからくり時計が動き出します。正午の1時間ほど前から広場のカフェ
で特産のビール(チェコはビール大国でドイツより個人あたりの消費量が多い。
米国のバドワイザーはチェコのブディヨヴィツェ[Budejovice]からきている。
とにかく美味しい。)を片手に道行く観光客の様子を観察しながらゆっくりと
待っているのも一興です。

 広場にはレストランやカフェ、それからボヘミアンガラス等のお土産屋さん
がたくさんあります。お土産屋といえば、カレル橋の橋上の似顔絵屋、絵はが
き屋は言うに及ばず、お城までの小道、逆方向の旧庁舎広場までと旧庁舎から
バツラーフ広場までの路地のいたるところに店があります。並べている商品の
種類も豊富で、高級切り子から子供用の小物類、絵画、フィギュア、Tシャツ
等の専門店が軒を連ねています。世界中でこんなに土産物屋が沢山あるところ
は他にはないのではないかと思います。

 また、路地のちょっとした広場には日本でゆうところの朝市も立ちます。食
料品、お花、衣類から日用雑貨までずらっと並びます。6月にはサクランボが
安かったのでつい山ほど買って食べ尽くすのに往生しました。(ホテルマザン
カには個室に冷蔵庫もテレビもなかった。)

 旧市街からバツラーフ広場(プラハの春で有名)への途中には日本食や中華
のレストランもありました。日本食はかなり高いので敬遠しましたが、中華レ
ストランに何回か行ってみました。けっこう美味しかった記憶があります。現
在の町の中心はこのバツラーフ広場と隣接するプラハ駅です。当時のプラハ駅
は年代物で、ジュッセルドルフ在住の田中氏を迎えにいった日には雨漏りがひ
どかったのを覚えています。バツラーフ広場の正面には大きな博物館が鎮座し
ています。こちらで印象的だったのは大きな食塩の結晶です。立法晶ですので、
きれいな立方体の形で一辺が50cmはある立派な単結晶でした。

 バツラーフ広場には大きなホテルやレストランが軒を連ねています。地下に
は大きなスーパーマーケットもありました。広場にも何度も通いましたが、一
度、消防士のコンテストに出くわしました。巻いたホースを片手に障害物を飛
び越え駆け上ってタイムを競うものです。女性の消防士も多く、しかも男性と
体格が違わないのに気がつきました。そう思って回りを見渡すとチェコでは男
性と女性の体格は日本人の場合ほど差が無いようです。平均身長などはさほど
変わりない様に見受けられました。

 今回はプラハの観光案内になってしまいました。バーティミアスの第2巻
「ゴーレムの目」にも登場するプラハ城とカフカの住居跡や郊外の古城、旧友
田中氏と西澤社長とのエピソードはまたまた次回以降になってしまいました。
ご容赦を。
                                【 以下次号 】

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 ┃イ┃ベ┃ン┃ト ┃ご┃案┃内
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 ◎信州自然誌科学館 2013「自然のちから」
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■ 日時:2013年 8月3日(土)10:00〜17:00、8月4 日(日) 10:00〜16:00
■ 会場:信州大学理学部 (松本市旭3-1-1) TEL:0263-37-3142
■ 対象: 小学生、中学生、高校生、一般
■ 参加費:無料
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 展示、簡単な実験・観察・工作等をとおして、自然や   〜〜〜〜〜
科学の面白さを五感で体験できます。今年も、自然と科   \______/
学のふしぎな世界を紹介するパネル展示、実物や実験で   /   \、
理解を深めるブース展示、むずかしいことをやさしく解   o。 _/}  ,\
説する講演会などの企画を盛りだくさん用意しています。  <')_><{ l
若い学生の皆さんが、納得できるまでていねいに説明し    \ `  `/
ます。たくさんの皆さんのご来場をお待ちしています。
         (信州自然誌科学館 2013「自然のちから」実行委員会)
ホームページ:http://science.shinshu-u.ac.jp/~shizen/2013/index.html

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   ┃T┃O┃P┃I┃C┃S┃ 
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      ┃信┃大┃学┃長┃ ┃山┃沢┃清┃人┃氏┃を┃再┃任┃
      
   ◎ 信州大学(本部・松本市旭3)は7月4日、任期満了に伴う学長選の
   結果、1期目の現職・山沢清人氏(68)を次期学長に再任すると発表し
   た。任期は10月1日から2年間。近日中に文科省に申請し、同省の任命
   を受けて正式決定する。
    山沢氏は学内で所信表明し「全学の英知を結集し、信大で培われてき
   た学問知を一層深めたい。高度な専門知識を有し、人と自然を愛する心
   豊かな学生を育てる」と述べた。
    学長選の候補者には前人文学部長・渡辺秀夫氏の名も挙がり、教職員
   による先月の学内意向投票で山沢氏が423票、渡辺氏が341票を獲得して
   いた。3、4日に開かれた学長選考会議による審議と投票で、最終的に山
   沢氏が選ばれた。
               (市民タイムス・2013年7月5日 より抜粋)
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      ┃理┃学┃部┃同┃窓┃会┃総┃会┃は┃11月2日┃に┃決┃定┃

   ◎ 去る6月28日に開かれた理学部同窓会役員会で同会の総会について
   次のような報告がありました。
   ■ 日時:2013年 11月2日(土) ※銀嶺祭の期間中
   ■ 会場:信州大学理学部 C棟2Fの大会議室を予定
   ▼ 以下これに関する文書を転載
  (イ)同日理学部では就職に関する資料の展示と共に「卒業生と語ろう」
   を企画しているようです。これは昨年、卒業生(若手中心)に来校して
   もらい「学生時代」について熱く語ってもらったものの第2弾。今回は
   「就職について」が中心のようです。
  (ロ)したがってこの企画の前に総会を開くことになります。各科の企画
   と併せ時間計画などは学部との調整も。
  (ハ)なお「卒業生と語ろう」のあと懇親会をもちますが、学部との共催
   になると思います。詳細は9月発行の会報に載せます。

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      ┃信┃大┃┃電┃子┃メ┃ー┃ル┃4100┃通┃喪┃失┃

   ◎ 信州大学(本部・松本市旭3)の学生や教職員が利用する学内電子
   メールシステムで6月に約4100通のメールが喪失するトラブルがあった
   ことが分かった。外部から大量の迷惑メールを受信したことに伴うシス
   テムの復旧作業中、作業員のミスで1100通以上が失われたほか、システ
   ムの不具合で3000通近くが消えていたことも判明した。
    複数の信大関係者のパスワードなどが外部者に不正に取得、悪用され
   て、電子メールシステムのサーバーに大量の迷惑メールが送信された。
   その影響でシステムの動作が著しく遅くなり、管理受託者の日立製作所
   (東京)が復旧を進めたが、担当者の操作ミスでl195通のメールが消え
   た。加えてシステムの不具合が見つかり、少なくとも6月に2950通のメ
   ールが喪失されていたことも判明した。
    信大総合情報センターは、学内利用者に被害報告や注意喚起をすると
   ともに、9月末をめどにシステムを改修する。
               (市民タイムス・2013年7月3日 より抜粋)
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 □■□□■□ 2013年春 卒業生・修了生の進路状況 □■□
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(いただいたデータが不完全なため、まだ詳細を掲載できません)

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 <再掲>■「同窓会費」は終身会費として1万円。『会計細則』決まる!■
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 1.同窓会費は終身会費として1万円とする。一括払いを原則とするが、本
 人からの申し出があった場合は事務局長が分割払いを認めることができる。

 2.事務局長名で金融機関に同窓会の口座を設ける。事務局長が通帳・印鑑
 を 管理する。会計担当がカードを管理して口座からの出し入れなどを行う。
 
 3.在校生からの同窓会費徴収は、事務局が徴収日を決めて実施する。徴収
 後、在校生の会費支払い者リストは、すみやかに会長ほか、会計担当および
 関連事務局員に伝達する。

 4.金融機関への振込み手数料は会員の負担とする。

 5.会計担当は、年1回開催する総会を利用したり、メールで呼びかけたり
 して、 卒業生からの会費徴収に勤める。

 6.毎年開催の同窓会総会における参加費の徴集など会計管理については、
 その年の幹事が担当し、事務局が補佐する。必要経費は事務局から事前に仮
 払いのかたちで支出できる。幹事は開催後しかるべく早く収支を事務局に報
 告し清算する。 

 7.会計年度を4月から翌年3月とする。           ┳ξ
 会計はすみやかに決算報告を作成                  ●●●
 して会計監査担当から監査を受ける。               ●●
                                                  ●
 8.本細則の改正は総会で行う。
            ┏━┳━┳━┳━┓
 ▼下記いずれかの口座に┃同┃窓┃会┃費┃のお振込みをお願いします!
            ┗━┻━┻━┻━┛
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  ◆郵便局の場合/通常郵便貯金 
  記号:11150 番号:20343411
  口座名義:信大物理同窓会 代表者 武田三男(たけだみつお)
  住所:390-8621 松本市旭3-1-1

  ◆銀行の場合/八十二銀行 信州大学前支店
  店番号:421 普通預金 口座番号:650215  
  口座名義:信大物理同窓会 代表者 武田三男(たけだみつお)
  住所:390-8621 松本市旭3-1-1
           
 ̄/ ̄/ ̄/ ̄/ ̄/ ̄/ ̄/ ̄/ ̄ ◎編集後記◎/ ̄/ ̄/ ̄/ ̄/ ̄/ ̄/ ̄/ ̄/ ̄/ ̄

●・・前号で取材報告した「信州大学校友会」の設立ですが、7月27日に同窓
 会運営会役員会が開かれ、「校友会」について一定のものが出されるそうで
 す。骨子は既報のとおり、新入生から会費として2万円を徴収し、会運営の
 原資とするほか、大学独自の奨学基金に当てる模様。注視したいと思います。
       ●・・ことしの総会での記念講演とパネル討論には、一般市民
  /\ ☆   と深志高校の高校生や先生など40名ほどが参加してくれまし
 │○│     た。パネル討論ではそうした方々からの質問が相次ぎ、惜し
 │ │      くも時間切れとなる一幕。一方、我が信大の学生・院生の参
/| |\    加はというと、わずか10名足らず。在学生が200名弱いるこ
 ̄ ̄ ̄ ̄     とから、学内的には極めて盛り上がりを欠く結果。総会後の
 ||||      総会幹事による反省会でも、そのことが話題に。一部教員役
        員に任せきりにするのではなく、今後はもっと直接的に学科、
 学部、全学教育機構などの学内組織に訴えて動かしていく方策が必要との結
 論。せっかくの講演だったので、もっと本学物理学生に聴いてほしかった。
●・・中村光廣氏に寄稿をお願いしたところ、上記「母校で講演をさせていた
 だいて」という原稿が到着。専門的な内容になるのかな〜と予想していまし
 たが、あにはからんや……。浅間温泉に建っている木村素衛氏の碑文を紹介
 されていますが、「大きな交響曲の一音が私の一生であろう」という含蓄あ
 る言葉にハッとさせられました。近ぢか現地を訪れたいと思います。最先端
 の研究者であるほど、哲学的な思索を必要とするのかもしれません。 (MT) 
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○・・松本に於ける第16回物理総会の講演会・パネルディスカションはとても
  良かった。現在の物理界の最先端の話題を目の当たりにして深い感動を受け
 ました。ヒッグス粒子、ダークマター(暗黒物質)、宇宙の創造とテーマが
 ミクロから膨大な宇宙に展開して、とても追いついて行けませんでしたが、
 自分なりにイメージして納得しました。
〇・・物理を専攻するに当たって憧れたテーマでありましたので、初志を貫徹
 して研究されて先生方々を羨ましく思い且つロマンを感じました。中村先生、
 竹下先生、川村先生、長谷川先生に厚く御礼申し上げます。
〇・・当日の聴講者は約80名、そのうち半数が市民の興味を持たれる方々で有
 りました。有り難く思います。松本市民は文化人が多い。      (MM)
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■ MAILMAGAZINE BULLETIN 『信大物理同窓会報』0044号(2013年夏号) ■
□ 2013年7月17日  編集・発行/信大物理同窓会事務局
《編集委員》松原正樹(文理10) 藤惇(2S) 渡辺規夫(4S) 太平博久(6S)
□編集長:藤 惇 □ 発行人:根建 恭典
■当会報のWEBでの閲覧サイト: (http://www.supaa.com/kaiho/index.html)

             ┌──┐  (http://www.supaa.com/)
               │\/│ (info@supaa.com/) (makoto@insatell.co.jp)
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