[ 信大物理同窓会報0011号/臨時増刊 ]
2004年12月3日配信


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≪≪≪≪≪≪ ●メルマガ会報0010号 2004年12月3日配信● ≪≪≪≪≪≪≪≪
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│田田田田田|──┐■━━■編集・発行/信大物理同窓会事務局■━━■
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 ■「旧文理学部物理学科」+「理学部物理科学科」OB&学生と教官の会■
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 ○-- 11月30日の各紙朝刊で報ぜられましたので、ご  --○   ☆ .: 
 ○-- 存知かもしれませんが、名古屋大学の丹羽公雄 --○ . /\ ::    
 ○-- 教授(文理17)がことしの『仁科記念賞』を受 --○ :'/ \ ∴ 
 ○-- 賞。ここにお祝いするとともにお知らせします。--○ '. ̄‖ ̄.

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                    ■2004年度仁科記念賞■
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    丹羽公雄(名古屋大学大学院理学研究科素粒子宇宙物理学専攻教授)
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          原子核乾板全自動走査機によるタウニュートリノの発見
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                  【仁科記念財団のホームページより抜粋】
             (http://www.nishina-mf.or.jp/prize/prize.htm)  タウレプトンが1975年に発見されて以来、タウニュートリノの存在は標準素 粒子論によって予言されていた。それ以降3個のクオークが発見されたが、タ ウニュートリノは最後まで未確認のまま残されていた。この残された基本粒子 の探索に終止符を打ったのが、丹羽公雄氏が率いたDONUT実験によるタウニュ ートリノの発見である。この発見は、丹羽氏のリーダーシップと彼が提案し、 基盤的研究を進めてきた原子核乾板全自動走査機の実用化なしには不可能であ つた。  電磁相互作用と弱い相互作用を統一する素粒子論は標準理論と呼ばれ、現在 の実験観測のほぼ全てを説明する.この理論によるとタウレプトンとタウニュ ートリノは対として考えられ、タウニュートリノの存在を疑う研究者はいなかっ たと言っても過言ではない。ただし、全ての仮説は実験で確認する必要がある。  タウニュートリノを発見するには、まず加速器のビームをターゲットに照射 し、多くの粒子を生成する。その中にタウニュートリノも含まれていると考え る。ここで生成された多くの粒子は原子核乾板の前に設置されたシールドによ って吸収される。ニュートリノは物質との反応が小さいので、このシールドを 通過し、非常に小さな確率で、36m先に設置された原子核乾板の中で反応し、 そのニュートリノの種類に対であるレプトンが生成される。DONUT実験は原子 核乾板の中にタウレプトンの飛跡が存在することを示した。この観測はタウニ ュートリノを発見したことに他ならない。  タウレプトンの寿命は3×10−13秒で、長くても5mmの飛跡しか残さない。 μ粒子が通過するとバブル・チェンバーでのニュートリノ測定は、中の液体が 沸騰してしまうので不可能であり、シリコン測定器は小さすぎて、まれなニュ ートリノ反応を観測するのは無理である。このような厳しい環境の中で生成さ れたタウレプトンを観測できる唯一の測定器が原子核乾板である。  DONUT実験は7個の原子核乾板モジュール(50cm×50cm、60枚の原子核乾板を 積層)に.1011個の飛跡を記録した。この信号をモジュールの外部に設置した シンチレーションファイバー測定器でニュ−トリノ衝突点と考えられる場所を 予想し、1011個の飛跡を選び出した。さらに原子核乾板全自動走査機が、顕微 鏡を用いて自動的にミクロン単位で、能率的に解析し、1000個のニュートリノ 反応を選び出し、その中からタウレプトンの候補を探した。  読み出した10の11乗個の飛跡の中から、7個のタウニュートリノ反応から生 成されたタウレプトンが観測された。この中に含まれるバックグランドはわず か0.8±0.2個である。この結果は正に世界の研究者が認めるタウニュウトリノ の発見である。  丹羽公雄氏がリードする名古屋大学のグループは、加速器実験であまり注目 されていなかった原子核乾板技術を発展させ、大規模原子核乾板実験に不可欠 な自動走査機を開発した。この世界で「オンリーワン」の技術が加速器実験で 行なう国際共同研究と発展し、基本素粒子の発見につながった。これは我が国 が誇るべき業績であり、仁科記念賞にふさわしいものである。 参考文献 1. Observation of tau neutrino interactions, K. Kodama et al..   Physics Letters B504,(2001)218-224. 2. Observation of the tau neutrino, B.Lundberg, K.Niwa, and V.Paolone   Annu. Rev. Nucl. Sci. 53,(2003),199-218. ---------------------------------------------------------------------- 丹羽公雄(にわ・きみお/名古屋大学大学院理学研究科・教授) プロフィール  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 1969年 信州大学文理学部自然科学科 卒業 1972年 名古屋大学理学研究科 修士終了 1976年 名古屋大学理学研究科 博士終了 理学博士 研究経歴  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 1975年 日本学術振興会 特別研究員PD 1978年 名古屋大学理学部 助手 1987年 同 助教授 1994年 同 教授 受 賞  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ レクチャーシップなど 2002年 日本物理学会論文賞 『仁科記念賞』とは  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  仁科記念賞は、故仁科芳雄博士の功績を記念し、原子物理学とその応用に関 し、独創的で極めて優秀な研究成果を収めた個人あるいはグループを表彰する ことを目的とする。毎年12月上旬各受賞者に賞状と賞牌、および1件に対し 50万円の副賞が贈呈される。  ここにいう原子物理学とは、原子、分子、原子核、素粒子はもとより、これ らの関与する基礎的なミクロの立場に立った物理学であるが、直接原子物理学 に係わるものに限らず、理学、工学、医学等あらゆる分野において原子物理学 に深い関連のある研究を含むものとする。老大家ではなく、新進気鋭の優れた 研究者に重点がおかれ、ここ4〜5年来の業績、あるいは最近その価値が認め られたものが対象となる。      ______________________________         ◆森覚先生(信州大学名誉教授)からのコメント       ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄        丹羽さんが、今回の「仁科記念賞」を受賞された陰には、彼の   、∩∩  オリジナルなアイデアと長年にわたる執念(彼はそれを戦いと言  ⊂田田⊃ っていましたが)があった訳で、実は以前に彼とちょっとした話    ⊂田田⊃ をした時に、しきりに彼のその哲学(信念)を語ってくれました。  /∪∪   それは、特に物理をやっている、またやろうとしている若い人       たちに是非聞かせたい実に含蓄に富む考え方だと思いました。 ======================================================================       ┃解┃説         【名古屋大学のホームページより転載】    ┗━┗━  1998年、岐阜県高山でのニュートリノ国際会議の席上、スーパーカミオ カンデの国際研究グループは、ニュートリノの質量の存在を確認したと発表し た。同じ会議でタウニュートリノ発見も報告され、これも大ニュースとなった。 私たち名古屋大学と米国立フェルミ加速器研究所の共同グループが発表した研 究成果だった。    タウニュートリノは現在の素粒子物理学の枠組みである「標準理論」によっ て、20年来、存在が確実視されていながら発見できずにいた。その意味で今回 の成果は標準理論を検証する“重要証拠”としての意義がある。しかし、それ は同時に、標準理論を超える新理論の探索に向けたエキサイティングな物語の 幕開けを告げるものでもあった。  標準理論によれば、ニュートリノは電子などの電荷をもつ軽い粒子(荷電レ プトン)とペアを組むことになっている。実際、電子の相方となる電子ニュー トリノは1956年に、ミュー粒子とペアを組むミューニュートリノは196 2年にそれぞれ発見された。  これに対し、タウニュートリノについては、1976年に相方のタウ粒子が 発見されたが、つい最近まで、私たちの前に姿を現すことはなかった。タウ粒 子が発見されてすぐ、タウニュートリノ検出実験が米国で計画されたが,実現 には至らなかった。大きな問題は,実用的なタウニュートリノの観測システム の開発に十分な見通しが得られなかったからだった。  私たちは粒子の軌跡を1/1000mmという精度で精密に記録できる原子核乾板を 利用、その解析をコンピューターで自動化し、処理速度を大幅に高めることで、 膨大なバックグラウンドの中に埋もれたタウニュートリノのシグナルをとらえ ることに成功した。 ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● /\ ☆  │○│   ◎当「信州大学物理同窓会メール会報」は当面、隔月刊〜季刊 │ │  ていどで発行されています。 /| |\  ◎みなさんの“投稿”が頼りです。お待ちしています。ご意見、  ̄ ̄ ̄ ̄ ご提案、ご感想、叱咤、激励、企画など、お寄せください。  ||||  ̄/ ̄/ ̄/ ̄/ ̄/ ̄/ ̄/ ̄/ ̄ ◎編集雑記◎/ ̄/ ̄/ ̄/ ̄/ ̄/ ̄/ ̄/ ̄/ ̄/ ̄ ●メルマガ『会報』10号を発行して“やれやれ”と思っていた矢先の12月1日 _____   午後、森覚先生から1通のメールをいただいた。中身は、丹羽先 |.-----.|  輩の『仁科記念賞』受賞のニュースと「その受賞は本当におめで ||∂.∂||  たいことで、それが信大物理同窓生の方が受賞されたのですから、 ||_ ▽_||  是非、メルマガ会報の『臨時報』としてでも皆さんに知らせてお `--)-(--`  祝いしたらと、森個人は考えますが、如何でしょうか?」という [___o]  檄が添えられていました。早速、ネット等で集められる情報をも       とに作成したのが、今回の11号臨時増刊です。 ●いずれは、丹羽さんから寄稿していただきたいと思いますが、今回は速報性 を優先しました。12月6日には東京で授賞式が開かれます。この取材も予定し ていますので、ご期待ください。(T) =================================== ■■■■■ MAILMAGAZINE BULLETIN 『信大物理同窓会報』0011号 ■■■■■   ●2004年12月3日 編集・発行/信大物理同窓会事務局               《編集委員》松原正樹(文理10)高藤惇(2S)      ┌──┐ (http://www.insatell.co.jp/physics/)     │\/│ (makoto@insatell.co.jp)         └──┘       


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