[ 信大物理同窓会報0017号 ]
2007年6月1日配信


・。・゜☆・゜・。・☆  ・。・゜☆・゜・。・☆  ・。・☆・゜・。

★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
≪≪≪ ● MAILMAGAZINE BULLETIN『信大物理同窓会報』0017号● ≪≪≪≪≪
          ┏━┓┏━┓┏━┓┏━┓┏━┓┏━┓┏━┓┏━┓┏━┓┏━┓   
          ┃信┃┃州┃┃大┃┃学┃┃物┃┃理┃┃同┃┃窓┃┃会┃┃報┃    
    ┌─┐┗━┛┗━┛┗━┛┗━┛┗━┛┗━┛┗━┛┗━┛┗━┛┗━┛
┌─┘○└─┐                                  
│田田田田田|──┐■━━■編集・発行/信大物理同窓会事務局■━━■
│田田田田田|田田| (http://www.supaa.com/)  ◎2007年6月1日配信◎
│田田田田田|田田|〒390-8621松本市旭3-1-1 信州大学理学部物理教室内
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ■「旧文理学部物理学科」+「理学部物理科学科」OB&学生と教官の会■
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 
(当メルマガ会報は《表示》→《文字のサイズ》→《等幅》でご覧ください)
----------------------------------------------------------------------
○-- 今年の「第10回物理会総会」は、学部のイベント --○ +□□/\  
○-- 自然誌科学館『自然の彩(いろどり)』の開催に合 --○ □□□□。)  
○-- わせて8月4日(土)になりました。またこの日 --○ □□□□/+  
○-- は、松本市中を踊りながら練り歩くお祭『松本ぼ --○ □□□
○-- んぼん』とも重なりました。総会に出席しがてら --○  +(。 )    
○-- 母校や街の活気をたっぷり味わってみましょう! --○ +  \/ 
     
      【 I ・ N ・ D ・ E ・ X 】
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
◇ 「第10回信大物理会総会」へのお誘い ・・・・・第10回同窓会総会幹事
◇ フォトニック結晶及びプラズモニクス分野の研究に到るまで・・宮丸 文章
◇ 信州大学東京同窓会のご報告・・・・・・・・・・・・松原正樹 (文理10)
◇ 新著書『曽禰 武 ― 忘れられた実験物理学者』の解説・・勝木渥(元教授)
◇ 信大文理学部OBで映画監督の熊井啓氏が逝去されました
◇ 「人事新報社」からの同窓生名簿拾集にはご注意を!
◇ <再録>「同窓会費」は終身会費として1万円『会計細則』決まる!
◇ 編集雑記
======================================================================   
  ■ 記念すべき第10回物理会総会にお越しください!! ■  
----------------------------------------------------------------------
                      =信州大学物理同窓会 第10回同窓会総会幹事= 
            ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 
                          #清水邦男(文理11) #美谷島実(文理15) 
                          #武田三男(理学4S) #横山敏彦(理学8S)             
                          #齋藤 祐(理学02)
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 
拝 啓 

 寒暖の差激しい気候もようやく安定し、今、松本平はリンゴの花咲き、新春
一色の佇まいです。皆様にはいかがお過ごしでしょうか。 

 さて、1998年5月、東京白金にて第一回の物理会第一回の物理会を開催
以来、早くも10回目を迎える事になりました。この記念すべき時にあたり、
今回は従来の5月開催の日時を変更させていただき、理学部在校生皆さん主催
の学内イベント「自然の彩」に合わせ、8月4日(土)に総会を持つこととな
りました。 

 総会に引き続き懇親会を行いますが、総会に先立って講演会を開催します。
講演はセイコーエプソン株式会社の映像事業部事業部長として最先端の映像機
器開発に取り組んでおられる、羽片忠明氏にお話をしていただきます。 

 時恰も、松本市はこの5月1日に市政施行100周年を迎えました。今年度
は「100彩まつもと」と銘打って、多くの催しが企画されております。また
旧文理学部跡地の建物も重要文化財に指定を受けました。同窓会日程に合わせ、
変化する松本の街を今一度見直されてはいかがでしょうか。 

 物理会も新たな意気込みで前進したいものであります。どうぞ、万障お繰り
合わせの上皆様方のご出席を頂きたくご案内申し上げます。 

 敬 具                        2007年5月吉日         
………………………………………………………………,-- ………………………
    い・よ・い・よ・今・年・度          /      \、
□■ ┏━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┓ □■□  V・  ・V ─┐
□■ ┃第┃10┃回┃信┃州┃大┃学┃ □■□┌ω人=♀=ノω┐│   
□■ ┣━╋━╋━╋━╋━╋━╋━┫ □■□│お 知 ら せ │/
□■ ┃物┃理┃会┃総┃会┃で┃す┃ □■□└──────┘
□■ ┗━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┛ □■□ 

《 開催・申し込みのご案内 》 → (http://www.supaa.com/meet10.html)

A)日程など
-------------------------------------------------------------
■日時:2007年8月4日(土) 13:30〜17:30
       13:30〜 記念講演会 15:00〜 総会 16:00〜 懇親会
■講演会・総会会場:信州大学理学部講義棟
■懇親会会場:旭会館(レストラン「ライジングサン」)
         ▲場所は上記申込みページの地図でご確認ください
■会費:7,000円(学生 1,000円) 
         ▲当日、会場でお支払いください

B)記念講演会 =一般公開=
-------------------------------------------------------------
◎記念講演演目:「商品創りにかける私の想い」
◎講演者:羽片忠明 氏【セイコーエプソン株式会社・映像機器事業部 
          事業部長/信州大学繊維学部出身】 

C)参加のお申込み方法
-------------------------------------------------------------
ホームページ(http://www.supaa.com/meet10.html)のオーダーフォームに必
要事項をご記入のうえ、送信してください。

D)自然誌科学館『自然の彩(いろどり)』などについて
-------------------------------------------------------------
◎毎年夏休みの時期に、理学部主催で開催されてきた市民向けのイベント。今
年は8月4日(土)・5日(日)の両日開催。各科の研究室・サークルが、講
義室や教室に様々なブースやパネルを展示して来訪者に説明するような仕掛け。

◎なお、8月4日(土)午前10:00〜昨年から実施されるようになった『学
部長とOBとの懇談会』も開かれます。こちらにもご参加ください。

◎松本化学学士会(化学科の同窓会)では同日に総会を予定していて、「懇親
会を“物理会”と合同で開かせてほしい」との要望が出されました。当同窓会
役員会・現地幹事会ではそれを了承。今回の懇親会では、化学科のOBたちも参
加いただくことになりました。

======================================================================   
  ■ フォトニック結晶及びプラズモニクス分野の研究に到るまで ■
----------------------------------------------------------------------
          宮丸 文章(理学部物理科学科助手・テラヘルツ分光研究室)
----------------------------------------------------------------------
 昨年(2006年)より、武田三男当同窓会事務局長の所属する信大物理科学科
・テラヘルツ分光研究室に赴任されています。1999年に大阪大学大学院博士前
期課程修了後、富士フイルム株式会社に2年間入社。2001年に大阪大学大学院
博士後期課程に入学され2004年に同課程修了。同年に、(独)理化学研究所の基
        礎科学特別研究員に就かれてのちに本学に移られました。研
  V ?      究分野は、テラヘルツ波工学・フォトニック結晶工学です。
(∵)       趣味は登山。特技はロックインアンプの時定数をいじること。
 \(@)⊃      物理科学科に新しい風を吹き込んでくださっているようです。
〜〜〜〜〜〜               (信州大学物理同窓会事務局) 
----------------------------------------------------------------------

       ある種のレーザー光を用いて集団振動を励起
      ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 2006年4月より物理科学科に赴任いたしました宮丸と申します.簡単ではご
ざいますがこれまでの自分の経歴と研究内容に関しまして、紹介させていただ
きたく思います. 

 研究の専門分野は光物性分野です.これはさまざまな物質が光に対してどの
ように反応するかを調べる研究分野です.また興味深い光特性を見いだした場
合、それをいかに人間の役に立つようなものに応用するかという、工学的な応
用も目指しています. 

 このような光物性に関する研究は、学部4年生の時に研究室に配属されて以
来、一貫して携わってきた研究分野です.学部・修士生時代は、半導体や半金
属中に励起されるコヒーレントフォノンの特性を調べていました. 

 一般にフォノンというのは、固体結晶の格子振動が量子化されたものですが、
通常それぞれのフォノンは個々別々に熱的に振動しています.しかし、例えば
机をバンッ!とたたいたときのように、もしくは音叉を小槌でたたいたときの
ように、短時間のパルス的な衝撃を与えると、その物質を構成する原子は一斉
に振動を初めます.つまり各フォノンの位相が揃い、巨視的な観測にかかるよ
うな格子振動になります.このような振動形態はコヒーレントフォノンと呼ば
れます. 

 ここでコヒーレントというのは位相が揃ったという意味です.外部から与え
るパルス衝撃は、フォノンの固有周波数よりも速い時間域が必要とされます.
半導体や半金属に光学フォノンと呼ばれているフォノンモードは、一般に数テ
ラヘルツという非常に高い周波数であるため、そのようなパルス衝撃を外部か
ら与えるのは一般に難しいことです.必死で手を動かしてもそのように速く動
かすことはできません.またマイクロマシンのようなメカニカルな動きも追随
できない領域です. 

 しかしある種のレーザー光を用いることによって、超高速なパルス衝撃を与
えることができます.自身の研究で用いたレーザーはフェムト秒パルスレーザ
ーと呼ばれているものでして、数十フェムト秒という非常に短い時間のみ光が
存在しているパルスレーザーです.このレーザーパルスで半導体や半金属をた
たくことにより、物質内の格子は一斉に振動を初め、コヒーレントフォノンが
励起されます. 

 このようなコヒーレントな集団振動を励起することによって、例えば、ばら
ばらに振動しているフォノンを巨視的な観測にかかるように位相を揃え、相転
移を誘起することができる可能性が生まれてきます. 

  
        企業に就いて、大学で学ぶ内容の大切さを知る
       ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 修士課程卒業後は企業に入社し、そこで光学機器開発の業務に携わってきま
した.商品としての光学機器設計は、もちろん大学の研究室における光学装置
製作とは異なりますが、それを考慮しても、いかに研究室における光学装置製
作がいい加減で考慮不足であったかを身にしみました.種々の光学素子の特性
もあまり深く理解しないで、いわば力業で装置を作っていたことを自分自身気
づいたときは、非常に衝撃的でした.

 また、大学で学ぶべき内容がいかに大切であったかということも同時に思い
知らされました.一見大学の学問と企業での開発で必要とされるスキルとは関
連が薄いように思われ、学生時代にはその乖離性故に、大学で習う内容にはい
まいち本腰が入らなかったのが実状でした. 

 しかし実際は、表面に現れる個別のスキルではなく、基本的なものの考え方、
論理的な思考法というものが新しいものを作っていく上で最も大切だというこ
とにそのとき気づきました. 

 博士課程以降は、現在の主たる研究テーマであるフォトニック結晶、プラズ
モニクスの分野で研究を行ってきました.フォトニック結晶というのは、物質
の結晶と同様の意味で用いられており、光に対する結晶です. 

 通常、固体結晶というのは原子が周期的に並んでおり、その周期的なポテン
シャルの存在故、電子のとりえるエネルギーにバンド構造ができます.光に対
しても同様な周期的ポテンシャルがあれば、光のとりえるエネルギーにバンド
構造が生じ、それ故、多彩な光学特性が得られます. 

 フォトニック結晶の場合は、周期性がナノメートルからミクロンオーダーに
なりますので、従来の結晶というよりもむしろ人口構造物になります.このフ
ォトニック結晶を金属を材料として作ると金属フォトニック結晶と呼ばれるよ
うになりますが、この場合、光は光として存在しないで、金属中の自由電子と
非常に強く相互作用をしながら新たな状態で存在するようになります. 

 一般に、自由電子の集団的な振る舞いをプラズモンと呼び、プラズモンと光
が結合した状態をプラズモンポラリトンと呼びます.金属のように物質の内部
に光がほとんど侵入しない場合は、表面のみにプラズモンポラリトンが存在で
きますので、金属フォトニック結晶内の新たな光の状態は、表面プラズモンポ
ラリトンと呼ばれます. 

 この表面プラズモンポラリトンは、一般的な自由空間中の光とは異なった特
異な特性を持っています.それ故、金属フォトニック結晶の光学特性は、他の
物質で作製したフォトニック結晶とは全く異なったユニークな特性を持ってお
り、非常に興味深い研究分野になっています.

 例えば、表面プラズモンポラリトンは金属表面のごく近傍、波長よりも短い
領域に局在しており、そのため強い電場の集中効果が生じます.これは光エネ
ルギーの有効利用のみならず、非線形光学効果の増大にも寄与することができ
ます. 

 さらに昨今、この表面プラズモンポラリトンの特異な性質を利用して、今ま
でにない新たな光デバイスを作ろうとする研究分野、“プラズモニクス”がに
わかに盛り上がってきていまして、ますます新しい発見や開発が期待されます. 

 今後もこのフォトニック結晶及びプラズモニクス分野の研究を引き続き継続
する予定でして、本分野における新規現象の発見に加え、理学部ながらも新規
物理現象を用いた応用開発を目指していこうと思います.

               (二〇〇七年二月七日 雪深き乗鞍山中にて) 
                  ( http://www.supaa.com/kikou/miyamaru01.html )

======================================================================
  ■ 信州大学東京同窓会のご報告 ■
----------------------------------------------------------------------
    『信大物理同窓会報』編集委員 松原正樹 (文理10・八王子市在住)
----------------------------------------------------------------------
 (・>    信州大学東京同窓会が以下の通り開催された。
 /彡))   
/ /     名 称:信州大学東京同窓会(オール信大東京地区同窓会)
/"?k_     日 時:平成19年2月3日(土)
          会 場:アルカディア市谷(私学会館)

●開催内容 講演会/講師:丹羽公雄氏(文理17回生)名古屋大学大学院教授 
     仁科記念賞受賞 宇宙素粒子物理学研究の最前線と日本の基礎科学
     研究動向について話された。

     総会:参加人員総数約120名、来賓として大学本部から小宮山学長、
     白井理事長以下スタッフの方々にお出で頂き、更に現役学生役20名
     の特別参加が有り盛況であった。小宮山学長からは予算削減で大学
     運営に苦慮されている旨の話があり、白井理事長からは大学の活動
     の現況報告があった。

     懇親会:現役学生20名による「そうらん踊り」が披露されにぎやか
     なアトラクションであった。信州大学東京オフィスの開設報告がさ
     れた。各種利用が可能である。

●国立大学法人「信州大学東京オフィス(産学官連携推進本部)」について

     〒134-0091 東京都江戸川区船堀3-5-24 朝日信用金庫 船堀セン
     ターコラボ産学官プラザin TOKYO 504号室 産学官コーディネータ
     ー 杉原佳代子
     TEL/FAX :03-3687-3075 
     E-mail shinshu-u-collabo@bz01.plaza.or.jp

     当信大東京同窓会の今後の発展の為に関係者は並々ならぬ努力をし
     ております。若い方々の参加が不可欠です。東京在住の方は来年か
     らの同窓会参加を切に願います。
                                以上

======================================================================
  ■ 勝木先生が『曽禰 武 ― 忘れられた実験物理学者』を上梓 ■
----------------------------------------------------------------------
        2007.03.07 勝木渥 (元信州大学教授/東京都多摩市在住)
----------------------------------------------------------------------
 当物理同窓会WEBサイト「寄稿」ページに掲載された勝
木先生の「私のしてきたこと」の最後のパラグラフに書か  ⌒/\     
れたことに関連する出版です。              -/| \ ⌒⌒
( http://www.supaa.com/kikou/katsuki01.html )      /_|___\
 先生から、「著者による解説 ―一般向け2007.3.17     __L____
(4.30, 5.09,5.14 正誤増補)」をお送りいただきまし  \_____/〜〜
た。ゆくゆく「寄稿」ページにも掲載したいと思います  〜〜〜〜〜〜
が、それに先立ち、メルマガ会報の今号で「正誤増補」以外の前文をご紹介い
たします。先生の労作を是非お読みください。(信州大学物理同窓会事務局) 
----------------------------------------------------------------------

 この本の表題は、表紙(カバー)では『曽禰武 ― 忘れられた実験物理学者』
となっていますが、著者が本来つけたかった題名は、中扉にあるように

  基督主義者にして一時代早過ぎた実験物理学者 曽 禰  武
  ― 若き日の魂、一生を貫く ―

 というものでした。表紙に掲げるには、これでは長すぎて迫力を欠く、とい
うことで、短い形容句「忘れられた実験物理学者」だけをつけることにしたの
です。

 曽禰武(そね・たけ)は、世界で初めて反強磁性体の磁化率のネール温度に
おけるλ型異常を観測したり(1914,酸化マンガンMnOで)、〔当時はまだ「反
強磁性」の概念が成立していなかったため、この現象に本多と曽禰が与えた説
明は正しくありませんでした。曽禰の発見した現象に正しい説明を与えうる理
論が提示された、または曽禰の発見した現象がその理論の正しさの一検証にな
っているような理論が発表されたのは、実験から4半世紀以上経った1941年で
した。――このことが、中扉に掲げた“ほんとの表題”中の形容句「一時代早
過ぎた」に対応しています〕

世界で初めて気体の磁化率の信頼すべき値(特に水素の)を提供して(1919)、
〔曽禰の気体の磁化率の測定は、当時、世界第1等のものでした。それは気体
の純化(とりわけ、不純物としての酸素の混入の防止)に成功したことにより
ます。曽禰の、特に水素の磁化率の測定結果は、当時問題になってきていた新
旧量子論の優劣判断のための3分野(エネルギー・誘電率・反磁性)の実験事
実のうちの反磁性の分野の信頼できるデータを提供するものでありました。〕

 1925年度の学士院賞(東宮御成婚記念賞)を受賞するほどの成果を挙げたりし
ながら、胸を病んで1920年の暮れから3年間療養し、病癒えたときには基督教の
伝道者としての道を歩みたいとの望みを抱く(*註)にいたり、立教大学予科の
教授に転進して、物理研究者の道を棄てたために、後世ほとんどその業績が知
られないままでした。
  _________________________________
  (*註) 学士院賞の賞金1000のうち、200円と100円をそれぞれ実験を助け
  てくれた年配の金工の技官と若いガラス工の技術員に贈り、その余り700
  円で家を一軒借りて、曽禰自身の教会を創り、戦時中の「按守礼を受けて、
  政府の認可する日本基督教団に属すること」を拒否して教会を閉鎖するま
  で、そこを拠点にして16年間伝道に携わりました。(070528 追補)
   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 この曽禰の事績を、先ず「聞書き」の方法によって掘り起こし、さらに論文
・資料等を広く渉猟し、綿密な照合作業を通して、時には曽禰の記憶の誤りを
正すこと(この場合、なぜそのような記憶違いが起こったかの原因の推定も試
みています)などもしながら、一書に仕上げたものが本書です。

 このような書き方をしたので、この本で紹介されている諸事象の「事実性」
はきわめて高い確率で保障(保証)されているといえます。

 この1月に単行本として陽の目を見るまでに、日本物性物理学史、特に本多
スクールの仕事にまったく無知であることを物性物理学者として恥ずべきこと
であると心から痛感して、日本物性物理学史の実証的研究を自分のライフワー
クにしようと思い立った1969年夏から数えて37年余、曽禰のことを初めて知っ
た1971年秋から数えて35年余、曽禰に初めて会った1976年秋、そして曽禰を自
宅に訪ねて最初の聞書きをとった1976年10月25日から数えて30年余を、要しま
した。

 いささか感無量の感があります。

 教育の面から見ても、曽禰の小学校、中学校時代のこと、特に中学校で、理
科好き・実験好きの少年が、どのような契機で一生を物理の研究に捧げたいと
思い立ったか、どんな授業が一少年の心にそのような思いを芽生えさせたか、
そして、その思いを徐々に叶えていくようになる、旧制一高時代(ほぼ大学教養
部時代に相当)の経験 ― 実験が開講されないことへの落胆や、本多との出会い、
本多の研究を手伝った中禅寺湖のセイシの観測や、熱海の温泉の観測、熱海で
の宣教師一家との出会いと基督教への開眼、等々、人生の「精神的激動期」と
もいうべき青年期における特徴的出来事をそれぞれ、精細かつ簡潔に辿りつつ、
曽禰の人間形成の過程を浮かび上がらせようと勉めました。

 曽禰の一高受験の時期の物理の入試問題を紹介したり、本多の『鋼の焼入れ』
に関する職工教育(講習会)や、戦時下の少年少女労働者の自立的な自然科学勉
強の挿話などを、然るべき場所に嵌め込んだりしてありますが、これらは、今
やほとんど知る人のなくなった「満州物理学会」のことなどとともに、ある種
の歴史資料的意味を持ちうるでありましょう。

 また、大学理工系の大拡張があったり、人文社会系大学に理工系専門学校が
置かれたり、高等女学校卒業者の前に専門学校レベルの理数系のコースが広く
開かれるようになったりしたのは1944年のことで、それらは戦時下の国策に沿
ったものでしたが、その頃のことも書き込んでありますし、また、帝国大学の
最初の女子学生のある受講風景が曽禰の目撃談として語られていることも、ち
ょっとした興味を引くのではないかと思います。

 聞書きをきっかけとした一つの物理学史研究が、実際にどのような具合に展
開されてきたかについてもある程度具体的に述べられているので、この面での
一つの典型例として、物理学史家・自然科学史家にとって、大いに参考になる
ものであるかも知れません。

『曽禰武……』を読んだ私と同年輩の物理学者は、≪(この本には)曽禰武と
いう一実験物理学者の生涯とともに、当時のわが国の物理の実態が活き活きと
描かれ、大変興味深く読んでいる≫ という感想を寄せてくれましたし、私より
学年にして4年先輩の信大理学部の教授だった人(物理学科の人ではない)に
この本を呈上したところ、一週間ほど経ってから、≪読みました。感激をもっ
て全部読みました。/曽禰武さんを中心において、物理学者が物理学をいかに
研究してきたか、よく分かりました。/そこで、私としては恥ずかしいことで
すが、貴兄が修士論文のテーマに物理学史を与えておられたのを、あまり心よ
く思っていなかったのを、告白しなければなりません。御本を読んで、物理学
史はやはり物理学のなかで物理学を伸ばす分野の一つであると感じました。…
…≫ との感想を寄せてくれました。

 私は「物理学史は物理学のなかで物理学を伸ばす分野の一つである(=物理
学を伸ばす“ための”もの)」とは考えておらず、物理学とは独立の学問、そ
れ自体物理学と同等の学問的価値を持つ(べき)もの、歴史学の一分野だと考え
ていますが、学問としてしっかりした内容のものを書き上げようとして取り組
んだ結果が、この人がこのような感想を抱くという副産物をえたこと、この人
に「科学史の研究・物理学史の研究には学問的価値がある」との回心をもたら
しえたことを嬉しく思いました。

 この本に結実した研究は、信州大学在職中に、1969年頃から着手し、後に聞
書きに取り組み始めるに当たっては科研費を申請し、物性研が創設されるまで
の日本の物性物理学史の実証的研究ということを一本の筋として、1976年度か
ら1994年度まで、一般研究D(2回)、C(4回)計6回13年間総額548万円を得て展開
されたものです。

 単行本になったのは、定年退職後12年弱経ってからですが、信大理学部物理
学教室の一つの研究成果であるといえるものだと思います。

興味のある方、勝木渥( akatsuki-tanusa@nifty.com )にご連絡下さい。(07/
08/04 の物理会総会に参加する予定です。前もって、ご注文下されば、当日持
参して(または事前送付しておいて)著者割引価格2000円と引きかえに、手渡
しで頒布いたします。)

【書誌情報】
著者は勝木渥です。発行所は「績文堂」です。
横書きで、サイズは四六判、314頁(横14cm×縦19.5cm、厚さ2cm、重さ440g)。
図書番号は ISBN978-4-88116-147-0 C3042 2500Eです。
定価は、本体価格2500円+税125円=2625円です。
----------------------------------------------------------------------
 ▼アマゾン(ネット書店)“和書”の項「曽禰武」で検索ください
( http://www.amazon.co.jp/ )
 ▼セブンアンドワイ(ネット書店)での紹介ページ
( http://7andy.yahoo.co.jp/books/detail?accd=31839116 )

======================================================================
 □■□ 信大文理学部OBで映画監督の熊井啓氏が逝去されました □■□
----------------------------------------------------------------------
 安曇野市(旧南安曇郡豊科町)出身で、「海と毒薬」「日本の黒い夏 冤罪
(えんざい)」などの作品で知られる日本を代表する社会派の映画監督熊井啓
(くまい・けい)氏が5月23日午前9時51分、くも膜下出血のため東京都
内の病院で死去した。76歳。自宅は東京都内。葬儀・告別式は近親者のみで
行い、後日お別れの会を開く。喪主は妻で松本市出身のエッセイスト、明子
(あきこ)さん。

 18日朝、自宅前で倒れているのを発見され、病院に運ばれて入院していた。
 松本中学校(現松本深志高)、信州大文理学部卒。独立プロを経て、195
4年に日活に入社した。64年、「帝銀事件・死刑囚」で監督デビュー。68
年公開の「黒部の太陽」は、大町市と富山県を結ぶ立山黒部アルペンルートの
黒部ダム建設を、故石原裕次郎さん、故三船敏郎さんらの出演で撮った。
 日活を退社後、「からゆきさん」の悲劇を描いた「サンダカン八番娼館・望
郷」(74年)や、太平洋戦争末期の捕虜米兵士生体解剖実験が題材の「海と
毒薬」(86年)を撮り、いずれもベルリン国際映画祭銀熊賞を受賞するなど
国内外で高い評価を得た。

 社会性の強いテーマと重厚なドラマを描き続け、2001年には、94年に
起きた松本サリン事件を題材に警察捜査と報道のあり方を問う「日本の黒い夏
 冤罪」を発表。県内で撮影した作品も多く、安曇野市では旧豊科町時代の0
1年から計5回、熊井氏の作品を中心に上映する「安曇野映画祭」が開かれて
いる。
                       (信濃毎日新聞WEB版より)

======================================================================
 □■□ 「人事新報社」からの同窓生名簿拾集にはご注意を! □■□
----------------------------------------------------------------------
(同窓会連合の原澤さんから以下のメールがありましたので紹介します)

学部・学科同窓会 会長様 
      事務局 各位 

研究推進部 原澤です。お世話になっています。
 
同窓会連合会に「人事新報社」よりの調査はがきについての問い合わせが 何件
か入っておりますので、対応についてお知らせします。 

「人事新報社」という会社から信州大学卒業生あてに往復はがきが送られ同窓
名鑑を発刊する目的で住所、職業等の調査がされているとのことです。(はが
きの返信による調査)そして名鑑を\10800で販売するといった内容です。 

この件に関しましては、信州大学同窓会連合会、信州大学とは一切関係があり
ません。 

調査をいたしましたところ、多くの大学・高専・高校でこのようなはがきがと
どいており、HP上での注意をしておりました。 

信州大学でもHP上で対応をいたしました。 下記URLよりご確認をください。 

http://www.shinshu-u.ac.jp/ 

学部・学科単位同窓会におかれましても、対応をお願いいたします。 
(すでに対応をされている同窓会におかれましては連絡が重複しすみません) 
よろしくお願いいたします。 

**〜**〜**〜**〜**〜**〜
〒390−8621 松本市旭3−1−1
 信州大学 研究推進部 産学官地域連携課
   (産学官連携推進本部 産学官連携担当)
  原 澤  和 子
**〜**〜**〜**〜**〜**〜
                                
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●

 □■新たに┃同┃窓┃会┃員┃登┃録 された面々のプロフィール  
 □■改めて┗━┗━┗━┗━┗━┗━   (順不同=到着順)
  □▲会員登録のページ:(http://www.supaa.com/supaa_form.html)
----------------------------------------------------------------------
 \ | /   ◎ホームページ上から「会員登録」されますと、当会のメーリ
 ― ◯ ─   ングリストにも追加されます。そのルートから、当メルマガ会報
 / | \   も配信されます。会員側からも、当MLの代表メ−ルアドレス
           (ml@supaa.com)宛にメールを発信されますと、全登録会員に届
      く仕組みです。当会報のバックナンバーを閲覧するパスワードは
      登録時点に各位にお伝えしています。お忘れの方は、WEB担当者
      (makoto@insatell.co.jp)までお問合せを。 (以下、到着順) 
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●

(省略)

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ◎住所、メールアドレスなどに変更が出た場合は、「同窓会員登録」から再
 度ご連絡ください。
 ◎現在、当会メーリングリストの会員数は280余名です。まだ未加入の卒業生
 をご存じの方は、当会のことを伝達いただければ幸いです。
   
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
======================================================================
 <再録>■「同窓会費」は終身会費として1万円。『会計細則』決まる!■
----------------------------------------------------------------------
 1.同窓会費は終身会費として1万円とする。一括払いを原則とするが、本
 人からの申し出があった場合は事務局長が分割払いを認めることができる。

 2.事務局長名で金融機関に同窓会の口座を設ける。事務局長が通帳・印鑑
 を 管理する。会計担当がカードを管理して口座からの出し入れなどを行う。
 
 3.在校生からの同窓会費徴収は、事務局が徴収日を決めて実施する。徴収
 後、在校生の会費支払い者リストは、すみやかに会長ほか、会計担当および
 関連事務局員に伝達する。

 4.金融機関への振込み手数料は会員の負担とする。

 5.会計担当は、年1回開催する総会を利用したり、メールで呼びかけたり
 して、 卒業生からの会費徴収に勤める。

 6.毎年開催の同窓会総会における参加費の徴集など会計管理については、
 その年の幹事が担当し、事務局が補佐する。必要経費は事務局から事前に仮
 払いのかたちで支出できる。幹事は開催後しかるべく早く収支を事務局に報
 告し清算する。 

 7.会計年度を4月から翌年3月とする。           ┳ξ
 会計はすみやかに決算報告を作成                  ●●●
 して会計監査担当から監査を受ける。               ●●
                                                  ●
 8.本細則の改正は総会で行う。
            ┏━┳━┳━┳━┓
 ▼下記いずれかの口座に┃同┃窓┃会┃費┃のお振込みをお願いします!
            ┗━┻━┻━┻━┛
 ------------------------------------------------------------------
  ◆郵便局の場合/通常郵便貯金 
  記号:11150 番号:20343411
  口座名義:信大物理同窓会 代表者 武田三男(たけだみつお)
  住所:390-8621 松本市旭3-1-1

  ◆銀行の場合/八十二銀行 信州大学前支店
  店番号:421 普通預金 口座番号:650215  
  口座名義:信大物理同窓会 代表者 武田三男(たけだみつお)
  住所:390-8621 松本市旭3-1-1
           
 ̄/ ̄/ ̄/ ̄/ ̄/ ̄/ ̄/ ̄/ ̄ ◎編集雑記◎/ ̄/ ̄/ ̄/ ̄/ ̄/ ̄/ ̄/ ̄/ ̄/ ̄

       ●松崎先生(名誉顧問)をはじめとする恩師を囲む集まりとし
              て自然発生的(?)にはじまった「信州大学物理会」もことし
  /\ ☆  で10回を数えることになりました。毎年多くのOBが集合する            
 │○│       この会は、いちばん活発な学科単位の同窓会として注目を浴び
 │ │     ているようです。触発されるように、他の科でも同窓会がつく
/| |\   られ、それが全学へ……。ますますの発展を願いたいものです。
 ̄ ̄ ̄ ̄    ●勝木渥先生のライフワークともいうべき労作『曽禰 武 ―
 ||||     忘れられた実験物理学者』(積文堂)が出版されました。手に
       入りづらい場合は、上記先生のメールアドレス宛にご注文くだ
さい。先生の手許から、直接本が届くとのことです。老いてますます盛ん(失
礼)な先生ですが、理13Sの鳥塚潔さんが保存していた勝木先生の講議ノート
が整理されPDFファイルにまとまりました。宮地先生の「量子力学講議ノート」
につづく第2段として、このサイトへの掲載の準備をすすめています。(T)
●若葉が一斉に芽吹く季節になりました。人間の細胞も活性化してさまざまな
イヴェントが目白押しです。これらの催しに積極的に参加して、エネルギーを
吸収して明日への糧、活力としようではありませんか。 (M) 

===================================
■■■■■ MAILMAGAZINE BULLETIN 『信大物理同窓会報』0017号 ■■■■■
       ■ 2007年6月1日  編集・発行/信大物理同窓会事務局
      《編集委員》松原正樹(文理10)高藤惇(2S)
     ┌──┐  (http://www.supaa.com/)
       │\/│ (makoto@insatell.co.jp)    
     └──┘       
            ___________________________________________________
      (C)信州大学物理同窓会事務局 無断複製・転載を禁ず
       ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄





●「信州大学物理同窓会」事務局●

◎ご質問・ご連絡はメールまで。