第11回信州大学物理会 総会  part2
 
第一部 総会議事(司会:文理10回三上) 2:00〜2:45

 楠会長(文理7回)からこの日の集まりを有意義にとの挨拶に続き、議長に石田さん(19S)が選出されて議事が開始された。
1)まず新事務局長となった清水さん(文理11回)
「近傍」の中心を自分としてその距離と位置を変えることによって世界を広げることの数学的解説を踏まえ、第1回の東京白金での50人の集まりについて、福井眞さん(3S)の文章を引用しながらその思い出を語る。そして、本会が組織的に整備された2002年(第5回総会)以降、事務局長として活躍いただいた武田先生(前事務局長)の後任としての決意表明。
2)年次活動報告(2S高藤)
 ウェブ担当とメルマガの会報担当としての年次報告。2001年のウェブ開始からアクセス数14000超。今年に入ってから月間アクセス数が急増しており、その要因が『OB/OGの現場から』のシリーズによって卒業生の活躍の様子が紹介されたことも一因と思われるとのこと。今後は在学生の投稿も受け入れ、幅を広げて行きたい旨の報告であった。なお、岩田さん(19S)を含め2人でホームページが担当され、さらに、松原さん(文理10回)を加えた3人でメルマガ会報が発行されている。3人の編集会議(スカイプによる)は月間数回の割りで開かれている。
3)決算報告(12S近藤)
 終身会費制として新入生からも会費徴収がなされている一方、事務局はボランティアであり人件費はゼロとのこと。ウェブの維持費、取材に関して交通費補助など収支報告がなされ、監査担当の松原さん(文理10回)から監査報告がなされた。また予算案についても報告がなされ、新たに大学への協力金として理学部でのキャリアマネジメントの社会人講師への補助金を準備することが説明され、理学部長の武田さん(4S)からも状況説明と感謝の言葉があり、全会一致で承認された。
4)規約改正(清水事務局長)
 規約第6条に、二項として総会幹事の設置提案がなされ、全会一致で承認された。 また3名の新役員として太平(6S)、佐藤(91S)、志水(92Sa)の3氏が承認された。
5)その他(来年の総会予定について 12S近藤)
 来年は6月6日に松本(信州大学理学部)で開催する予定。来年は大学の60周年で全学ホームカミングデイの行事があり、これに参加する形での企画とするとの報告がなされた。
 以上により総会議事が終了し、書記として松原さん(文理10回)の紹介をもって第一部を終了した。(次の講演会準備の間に飲みもののサーブを開始。その間、6月14日に松本の県の森の松高講堂で開催される寮歌祭の案内の飛び入りアピールがあった。)
第二部 講演会 (司会:6S太平) 2:50〜3:55

 講師は、中谷宇吉郎雪の科学館館長の神田健三氏(3S)。 演題は、「中谷宇吉郎雪の科学館13年」

 15年前より館の開設の準備段階から参画してきたことや、建物が磯崎新氏による設計で、天井の六角形などで雪を表現してあり、グリーンランドから運ばれた60トンの石と人工霧など、館の紹介と中谷宇吉郎による雪の研究の紹介から始まった。中谷宇吉郎は寺田寅彦の弟子であり、科学映画(岩波映画)の基礎は中谷研究室とのこと。雪の結晶写真から人工雪製作装置など雪の研究の紹介に進み、雪の形成条件が温度と水蒸気量によることが紹介された。そして、降ってきた雪の形状を調べることによって上空の気象条件を推察できることが分かって、このことから「雪は天からの手紙である。」との有名な言葉が生まれた、と紹介された。最近は、信大教育学部OBの村井氏が考案した村井式人工雪装置により、常温の部屋でも雪の生成が可能となっていることも紹介された。

 続いて、持ち込まれた機材を取り出しての実験が始まり、最初は氷の融解による氷ペンダントの実験。アルミのモールドに挟まれた氷片がみるみるうちに溶ける理由の質問に対し、会場のほとんどは勝木先生の圧力とのご見解に従ってはいたものの、実際には熱伝導度であることが示され、物理の旧学生達も改めて感動。

 更にチンダル像の実験。氷片にランプの強い光を当て、OHPで拡大投影すると、氷の内部に六角形の形状で融解が始まり、きれいな花模様が形成された。別名アイスフラワーとも言われる。科学館では最初から誰でも実験できるようにしているとのことで、チンダル像を観察し易い氷の作りかたについても紹介された。氷片の両面をオタマで溶かしてレンズを作れば、太陽光の集光で紙を燃やすことも可能であり、10分位続けると氷のレンズにチンダル像ができてくるとのこと。この実験には子供達も大いに興味を示していた様子である。

 雪の科学館では展示を見るだけではなく、いつでも体験できることで入館者の満足感を増すことにしていることの重要さは、参加者にも十分に実感できた。その他の館での屋外活動として、白山麓の白峰村や北海道大雪山系の旭岳へも出かけて親子雪教室が開催されている。館では常に人を配置してダイアモンドダストなど新しい実験設備も増やしており、子供雪博士、子供の一日館長などにより、子供達への教育の一環として、実体験の重要さが再認識されていることは、館の訪問者の感想の紹介からも明らかであった。

 一方、文化活動の一環として「雪のデザイン賞」が隔年で開催され、400点もの応募があり、ラトビアからの入賞作品が紹介されたが、芸術性の高さに目を見 張るものがあり、外部への作品展も実施されている。ラトビアや韓国など海外との交流活動も行われており、特にラトビアでの中谷宇吉郎展への参画では実験のみならず文化交流も行われ、ラトビア大使の訪問も受けたことや、韓国の化粧品メーカーとの関係からデザイン賞への参画も始まっていることが紹介された。また、中谷宇吉郎と湯川秀樹との交流の話として、会うごとに墨絵と短歌の掛軸を合作し、家族どうしのお付合による合作など秘話の紹介も興味深かった。また、火花放電の研究により飛行船の爆発の原因究明を行ったのが寺田寅彦と中谷宇吉郎であり、それを発展させた火花放電の実験にはウィルソンの霧箱が使われた由。中谷宇吉郎が当時ウィルソンに送っていた手紙や写真が孫の方から返贈されたことも紹介された。

 中谷宇吉郎は最近の理科の教科書に採用されているし、昔は国語の教科書にも良く使われていた。寺田寅彦がダントツだが、二位が中谷宇吉郎、三位が湯川秀樹とのこと。半月前にお亡くなりになった伏見康治先生も館を訪問されて、雪の折り紙で有名な富山大学の鈴木先生の紹介を受け、館では折り紙も始めているし、この7月からは北極圏アラスカ展の準備を進めているとのこと。そして、館長としての13年の実績に基づき、下記の総括が示された。

 (1) 館は、宇吉郎と雪氷について、さまざまな面から発信し、有意義な交流や関係を作ることができたと思う。多くの市民との交流、雪の科学と文化の交流、国際的な交流も。

 (2) 宇吉郎の人物的魅力、雪氷(科学や美)の魅力からの触発の場を整え、企画・実行していくことが、引き続き、館の課題である。

 最後には、信大時代から続けていた自然研での穂高涸沢雪渓調査からの研究の一端が紹介された。学生時代に樋口先生や現在の極地研所長の藤井先生と松本で会議を持ったときの写真により、当時名大にいた岡田さん(2S)や、名大大学院の樋口先生の研究室へ入った楠さん(7S)の紹介もあった。また、杉原さん(5S)のお宅の木崎湖レイクサイドでの自然研の会議での写真により、鷺坂先生を囲んで杉原夫妻、櫛田さん(8S)、和田さん(7S)、太平(6S)らの紹介もあった。最後に、信州では数ある雪形が加賀の白山には無いと思われていたが、館などの最近の調査で多数の雪形伝承の存在が明らかになってきたことが報告された。
第三部 懇親会 (司会:91S佐藤) 4:00〜5:05

1) 宮地先生(同窓会名誉顧問)
 同窓会を来年も是非続けていただきたいとのお祝いの言葉を頂戴した。
2) 理学部同窓会長森氏
 大学法人化による人件費、研究費の縮小環境において理学部長に就任された武田三男先生への激励の言葉と、理学部同窓会として微力ながらも応援していきたいとのご挨拶を頂いた。
3) 理学部長武田先生
 微力ながら努力するので同窓会を上げての支援を頂きたいとのご挨拶。
4) 根建副会長の乾杯
 第1回からこれまでの同窓会活動は充実してきている。一層の発展を祈念して乾杯。
     (引き続き歓談)
5) 勝木先生の言葉
 雪の映画を小学3年(1938年)のときに見たことがあり、松本でダイアモンドダストを体験したことがあるとの思い出話に続き、勤労の義務がないがしろにされている現状を憂い、あるべき姿を求めるべきとの強いご意思の演説を頂いた。
6)女性参加者からの発言
 その後、女性参加者の中から2人のあいさつがあった。松本節子さん(文理13回:明治大学教授)からは今も教鞭を取り続けていることや固体物性についての研究の状況のお話があり、佐藤祐子さん(91S:御茶ノ水女子大講師)からは、研究内容の紹介、そして同窓会初参加ながら役員になったことへの驚きと共に事務局役員としての自覚に満ちた挨拶があった。

 続いて近藤さん(12S)の紹介で清水事務局長(文理11回)の口上に続いて「春寂寥」斉唱。全員肩を組んでの歌声は館内に高らかに響き、3時間を短いと思いつつ感動的な閉幕のシーンであった。

【総会幹事の総括としての感想】
 今回の総会幹事は、昨年8月の松本での第10回総会の時に、三上さん(文理10回)、近藤さん(12S)に加えて、91Sの佐藤さんと私(6Sたいら)が選任され、年明けと共に準備を開始した。近藤さんや佐藤さんなどの若い世代からの参加者を増やして同窓会活動の活性化を目指してきました。参加者は39人(残念ながら1名が直前に欠席)と参加者の減少傾向に歯止めが掛けられたと思うが、まだまだ課題は多いと思われる。
 学年幹事は2001年頃より設定されてはいたもののその役割は明確ではなく、学年幹事の決まっていない学年も半数ほどあり、まだまだ不安定な状態である。今後は、事務局員としてより積極的に参画して、会の一層の発展に寄与していきたいと思う。


 以上


●「信州大学物理同窓会」事務局●

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