第2回
● 大学にはもう少し「遊び」の部分が必要 
佐野 和博(理学12S 物性論研究室)    22OCT.2007
【(国)三重大学工学部物理工学科 物性物理学 准教授】 
 現役で活躍中の当同窓会員に、現場の様子などについて自由に語っていただこうというのが、このシリーズ『OB/OGの現場から』です。第2回にご登場いただく佐野和博さんは、本学では物性論研究室に所属。現在、(国)三重大学工学部物理工学科で物性物理学を担当され、研究のかたわら、後進の指導にあたっておられます。

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 私は1981年に信大を卒業した後、都立大の修士を経て名古屋大の博士課程で物性理論を専攻しました。博士の学位は3年間ではとれず4年かかり、その後半年かかってなんとか現在勤めている三重大学に就職することができました。当時、大学の学生定員が第二次ベビーブームの影響で全国的に増えており、それに伴い大学教員の就職口も増えていたので、私のような者でもうまく就職できたわけです。18歳人口が減少している現在では、大学への就職は大変厳しいようです。

 三重大では最初、教育学部の物理科に所属して主に全学の教養物理学を担当していましたが、その後改組があり現在所属している工学部物理工学科に異動になりました。早いもので、就職してから20年、物理工学科に移動してからでも10年がたってしまいました。

 三重大の物理工学科はホームページ、(http://www.phen.mie-u.ac.jp/)をご覧頂ければわかりますがその理念として「工学の基礎としての物理学と機械工学・電気電子工学を融合させた教育課程により、物理に強く、機械・電気電子をこなせる人材を育成する」とあるようにかなり欲張った学科です。物理系の開講授業科目としては物理数学、統計力学、量子力学、固体物理学、量子物理学、物性物理学(電気系の科目ではあるが電磁気学)など一応コアとなる授業は開かれています。(ちなみに私は現在「物性物理学」を教えています。)

 機械・電気電子系の授業もだいたい同じ分量程度開講されていますので、学生にとっては結構ハードではないかと思いますが、ただどうしても授業の内容は普通の専門学科と比較すると見劣りしたものになっています。理想はかなり高いですが、現実はなかなかきびしく、「広く浅く」になりがちなのはやむを得ない所です。

 物理工学科は工学部の学科ですから、理学部とは雰囲気や文化(教員や学生の気質とかものの考え方)が微妙に違いますが、地方大学で学生定員が一学年40人のこじんまりとした学科であるという所などは、信大物理学科とよく似ています。従って学生を見ているとかつて自分が学生だったころの事がよく思い起こされます。

 よく覚えていることは、勝木先生の授業のレポートは毎回大変だったとか、授業が朝イチに行われていたため、朝に弱く怠慢な私はたびたび(と言うかほ とんど)遅刻していたとか、また犀川先生の授業(物性物理学特論?)では4年生向けの選択の授業だったためか出席していた学生が私と同級生のTさんの2人しかおらず、しばらくはサボるにサボれなかったのですが、学期半ばでついに私はドロップアウトしてしまったとかなどです。懐かしい思い出ですが、現在の教師としての立場から考えるとかなり恥ずかしい思い出ばかりなので困りものです。

 私が担当している「物性物理学」の授業は4年向けの選択の授業(犀川先生 の授業に相当)ですが、授業の最初の出席者は多いのですが学期半ばを過ぎるとやはり数名以下に減ってしまいます。学生には、もっと真面目に勉強しなさいと一応口では言っていますが、昔の自分を思い出すとなかなか学生に強いことは言えません。

 三重大の学生を見ていると、まじめで優秀な学生もいれば、サボりぎみの学生もいて授業に四苦八苦しながらも、なんとか卒業していくという者もいます。このような状況は我々が学生だったころとあまり変わっていません。ただ最近大学全体が昔と比べると万事余裕がなくなり何か息苦しくなりつつあるような感じがして、大変気がかりです。自分が過去受けてきた教育を考えてみても、大学にはもう少しゆったりとした「遊び」の部分が必要ではないかと常日頃考えています。

● 関連WEBサイト ●
三重大学工学部物理工学科 http://www.phen.mie-u.ac.jp/




●「信州大学物理同窓会」事務局●

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